錠剤の中心の割線は何のため?

 

 病院、調剤薬局でもらう薬剤で、非常に大事な薬剤として、心臓病薬のジゴキシン(商品名はジゴキシン、ジゴシン)、糖尿病薬のグリペンクラミド(商品名オイグルコン、ダオニール)があります。

 このような薬剤は効き目が強いため、お年寄りが丸ごと1錠飲むと、効果が強くですぎることがあります。

 その場合、薬剤の投与量を減らせるように、分割するための「割線」と呼ばれる線が素錠の上につけられています。

 睡眠薬ニトラゼパム(商品名ベンザリンネルボンなど)の素錠などにも、割線はよくみられます。糖衣錠には割線はありません。

 割線入りの錠剤を割る作業を、薬剤師が行うこともありますが、使用する人自身が行います。カッターナイフなどで切る人もいます。器用な人だと、スプーンの丸い背の上に錠剤をのせ、錠剤の両端を指で押して割る人もいます。若い人だと指先も自由に動き、両端を指で持って割ることも簡単にできます。

 しかし時々、真二つに割れないことがあります。正しく二つに割れなかった場合は、大きな片割れをさらに削って、ほぼ半分の量を確保するようにしてください。また、錠剤に余裕があれば再び、新たな錠剤を正しく二つに割ってから飲んでください。

 そうしないと、薬剤の投与量が正しく半分になりません。この作業は、プロの薬剤師でもうまくできません。ましてやお年寄りだと……。硬い錠剤だと均等に割りにくいし、やわらかい錠剤は割れた部分が欠けたりします。

 真二つにすることができるのは、心臓病薬のジゴキシン(商品名ジゴキシン、ジゴシン)と抗血栓薬のワルファリン(商品名ワーファリン)ぐらいではないかと言われています。

 しかし、分割して使用してはいけない薬剤にも、製造時の識別性を高めるため、故意に割線をつけた錠剤もあります。くれぐれも間違えないようにしてください。

 本来、お年寄り用には、成人の半分量に減らした薬剤も販売すべきでしょう。そうなると、病院の薬剤部や調剤薬局に、多くの種類の薬剤を置いておかなければならなくなります。経済的にも現実問題として不可能なようです。

 日本において、約100床のベッド数を持つ病院の薬剤部でさえ、約1000品目の薬剤を常に置いてあると言われています。投与量を半分に減らした薬剤を、常備しなければならなくいろな種類があるのかなると、1病院当たりの常備薬剤の数が1500品目にもはね上がり、薬剤部のスペースなどに問題がでてきます。

 現状ではやむを得ない、解決の困難な問題です。

◆目薬は自分だけのもの。絶対に人に譲ってはいけない

◆割線のある錠剤は、医師、薬剤師の指示に合わせて、きっちりと二つに割って飲むことが肝要。

『薬の聞く人、効かない人』高田寛治著より