薬剤を飲むと、体内でどう変化するのか

 

 先程お話ししたように、薬剤は多量に飮めばいいというわけではありません。循環血液中の濃度によって、その効果が変わってくるからです。

 では、薬は体内に入ると、どういう過程を経て、最終的に効果を発揮するのでしょうか。

 一般的に、次の4段階に分けられます。

1 投与した薬剤の薬が、吸収されて循環血液中へ入っていく、薬の「吸収」の過程

2 循環血液中から、薬の分子が作用を発揮する目的地の臓器などへ到達する「分布」の過程

3 薬は体にとって異物であることから、肝臓が薬を何とか水に溶けやすい化学構造へ変換しようとする「代謝」の過程

薬および代謝物を、尿の中に溶かして「排出」する過程

 ただし、この「吸収」「分布」「代謝」「排出」の四つの過程は、薬の性質ではなく、あくまで人間側の要因ですので、人それぞれによってその程度の差が異なるのは当然のことです。

 ただ、「吸収」の過程は、人間側の問題ばかりではなく、薬剤側の要因によって大きく異なります。飲んだ後すぐに薬が吸収されやすい薬剤もあれば、なかなか吸収されにくい薬剤もあります。

 皆さんが日頃使っているのは、薬ではなく薬剤です。薬剤とは具体囘にはカプセル剤、錠剤、貼り薬、点眼薬、坐剤のような製品を指します。

 実は薬とは、これらの薬剤と呼ばれる製品のなかに入っている、主成分の化学物質のことを意味します。

 薬剤を作るには薬(この場合、主薬と言う)に医薬品添加物と言われる助剤を混ぜて、錠剤やカプセル剤などに加工しなければなりません。この加工に使うショ糖などの添加物のちがいや、加工法によっても薬剤を飲んだ後の主薬の吸収のされ方が異なります。

 おもしろい芝居を見せるには、主役もさることながら、多くのシブい脇役が出演しないと盛り上がりません。同じように薬剤でも、主薬以外に脇薬が大切な役割を担っているのです。

 だから、薬剤を使用する場合は、十分によく考えて使用しなければならないわけです。

 先程から、循環血液中の薬の濃度の話がでていますが、では、薬剤を飲んだ後、循環血液中の薬の濃度は、どのように変化していくのでしょうか?・

 今、薬局・薬店、最近ではコンビニエンスストアにも、いろいろな薬剤の製品が数多く並んでいます。錠剤、カプセル剤、スティック包装剤など、きりがないほどの製品が積み上げられています。病院や医院に行けば、医師からも同様にさまざまな薬剤が処方されます。

 これらの製品の多くは、飲んだ後のあなたの体内での薬の動きを考えて開発されているのです。

 言い換えますと、薬剤を飲んだ後、循環血液中への薬の動きを知れば、薬の世界がはっきりわかります。そこで、錠剤などの「飲み薬」を飲んだ後、体内での薬の動きはどのような過程をたどるかということについて、もう少しわかりやすく解説しましょう。

『薬の聞く人、効かない人』高田寛治著より