ムカつく翻訳者の特徴

 

昔翻訳会社で働いていたときにもっとも頭にくる登録翻訳者の特徴は、フィードバックに対応しない奴。修正の要求を頑なに無視するのである。誰でも指摘されて嬉しいものではなく、指示に従って修正することには多大な労力とストレスが伴う。コーディネーターとして働いていた頃の私はそのころを理解していなかったが、しかし、プロの翻訳家である以上、依頼主である翻訳会社に従うのは当然という考えは今でも変わらない。

 

お客様から文句を言われれば、たとえそれが理不尽なことでも内心のイライラを顔に出さずに対処することを日本人は得意とするため、国産の翻訳者はフィードバックにすぐに対応してくれる。問題は外国人である。アメリカ人は一度注意されても従おうとせず、反論してくる。これに例外はない。かなり強めに言って聞かせないと、あからさまに自分が誤っているのに認めようとしない。こちら側にも精神的に相当な負担がかかる。

タイで根管治療

タイで虫歯の治療を受けています。

 

左上の奥から2番目の歯なのですが、最初は冷たいものや温かいものを食べたときや、日本の冬の外で息をすると左上のあたりがしみるというだけで、どこの歯が悪いのかはわかりませんでした。しかし、何もしなくて痛み始めたので、3ヵ月前にバンコクの歯医者に見てもらったところ、原因の歯がわかりました。その歯は10年前に銀を詰めてもらっていたのですが、その銀を削ると大きな虫歯がありました。タイ人の女性歯科医から“big cavity”と言われました。その虫歯の部分を取り除いてもらったところ、平時の痛みはなくなったのですが、しみる症状は依然として残っていました。ちなみに、この治療に支払った額はたったの700バーツ。診察は無料とのことでした。

 

その女性歯科医からは「根管治療root canal treatmentが必要となるかもしれないが、ここではその治療を行うことができないので、もし症状が良くならないようであれば大きな病院に言ったほうがいい」と言われました。治療費は2万バーツほどかかるだろうと言われました。

 

その後も依然としてしみる症状は残っていたのですが、ネットで調べると、安易に神経を抜かずに1年ぐらいは様子を見たほうがいいという情報があったので、それを信じて回復するのを待ちました。しかし6ヵ月たっても改善するどころか、しみる以外に僅かな痛みも感じ始めたので、根管治療を受けることにしました。費用は全て込みで14000バーツでした。6回ほど通院する必要があるのですが、最初の1回でしみる症状がなくなりました。歯の中を削ったため、炎症によりモノを噛むと激痛が走りましたが、2,3日で痛みはなくなりました。昨日に4回目の治療を終えたところです。

 

マニュアル翻訳者H.Kさんからの重要な報告

フリーランス翻訳者が自身のウェブサイトを作成する

 

20年以上前、私は特許と技術文書の英訳を本当に楽しんでいましたが、その理由の一部は他のタイプの翻訳よりも単価が高かったことにありました。友達の一人は米国政府から特許弁護士のリストを50ドルで購入できると教えてくれたため、私はその通りにし(この時はまだインターネット時代の前であり、インターネットのデータベースは存在しませんでした)、翻訳会社ではなく特許弁護士事務所に手紙を出し始めました。

 

1990年までに2000通の手紙を出したと思います。経験年数に関係なくフリーランサー全員が抱える悩みを払拭するために毎年手紙を出し続けました。

 

7年ほど前に定期的なお手紙キャンペーンをやめました。郵便料金が急騰したために選択肢がなかったのです。

 

自分のサービスを売り込む上でインターネットが最も重要になることに2000年に気づき始め、複数ドメインを登録し、フリーランスウェブデザイナーに依頼して翻訳サービスのウェブサイトを作成しました。

 

潜在的な顧客が自分のことをインターネットで見つけるかどうかは、ウェブサイトのURLの良し悪しに大きく左右されます。

 

残念なことに、14年前に比べて現在では検索フレーズをめぐる競争が激しいため、新規翻訳者がこれを行うことは困難です。

最後に.comで終わる、意義のある短いURLを作成するといくらかかるのでしょうか。それを調べるために興味本位でNetwork Solutionへ行きました (今でのNetwork Solutions や、潜在的に良好なドメインを保有する者から購入することができます)。今私が持っているドメインに関してそれが実用的であるかどうか私にはわかりませんが、何らかの価値があることは確かであり、私が14年以内にリタイアすることを決めたとしても価値のあるものであり続けると思います。

 

自分の仕事用のウェブサイトをアップし、良好なドメイン名で有力な検索エンジンにインデックスされれば、その後すべきことはそれほどなく、せいぜい年に1、2回更新し、SEO(検索エンジン最適化)専門家を通してURLと関連キーワードを提出するだけです。 料金もそれほどかかりません。

レキサルティの有効性と副作用

 

 

レキサルティの有効性は6週間に及ぶ第3相無作為化プラセボ対照臨床試験で、固定用量fixed dosesのレキサルティとプラセボを用いて評価されました。臨床試験データは以下の通りです。

  • 6週間にわたって適用量のRexultiを投与したところ、PANSS (Positive and Negative Syndrome Scale)の主要エンドポイントとして統計的に有意な有効性が明らかとなった。
  • 1件の臨床試験では、1日2mgおよび4mgのレキサルティ投与のPANSS総スコアのベースライン時からの変化は(-20.73 と-19.65) は、プラセボのものよりも大きく(-12.01)、もう1件の臨床試験では、1日4mgの用量におけるPANSS総スコアのベースライン時からの変化が(-20.00 vs. -13.53)がプラセボのものよりも大きかった (2 mgの場合はプラセボのものよりも大きくなかった).
  • 最も頻繁に生じた副作用は(発生率は4%以上、プラセボの場合はその2倍)体重増加であった。
  • レキサルティ投与を受けた統合失調症患者における傾眠状態sedation(鎮静状態sedationや睡眠過剰hypersomniaを含む)の発生率は9%であり、プラセボ群では3.2%であった (n=463)。

認知症関連の精神病psychosis を呈し、抗精神病薬antipsychotic drugの投与を受けた高齢患者では死亡リスクが上昇していた。死亡原因は様々であったが、大半は心血管(心不全など)や感染(肺炎など)を原因とするものであった。

精神病を患う患者の多くは現行の治療に満足していないと考えられています。Rexultiの承認は、メンタルヘルス-コミュニティに新たな治療法をもたらそうとする大塚製薬とLundbeckの努力の表れです。疾患を管理する上では、医療提供者と患者、およびケア提供者が有効性と忍容性を判断して治療を選択する必要があります。大塚製薬とLundbeck はMDDと統合失調症を抱える成人患者にレキサルティを提供できることに誇りを持っているでしょう。

Rexultiは米国で2015年8月上旬に利用可能になる予定です。1日1回投与の経口薬です。

「薬害根絶の碑」建立に対する厚生省の抵抗

 厚生省がある碑のことでゴネている。死者の数が四七八を超えた薬害エイズに対する反省から、薬害を繰り返さないとの誓いを碑にして後世に残寸との合意ができたのが九七年八月だった。ところが碑建立の詰めの作業が患者・遺族らと厚生官僚間で始まったとたん、予想外の問題にぶつかった。

 

 第一に患者と遺族の側は碑名を「薬害根絶の碑」または「薬害根絶誓いの碑」としたいとするのに対し、厚生省側は碑名は不必要として対立する。

 

 厚生省の医薬品副作用被害対策室の室長補佐中田章氏が、「碑名に薬害根絶の言葉を入れると副作用も薬害に入ります。しかし副作用の根絶はありえないのです」と話すのに加え、患者、遺族代表らとの話し合いの席では吉武医薬安全局企画課課長が以下の主旨のことを述べている。

 

「薬害根絶をこの碑が訴えていることは明らかであるが、碑名として入れると誤解する人も出てくる。薬害を副作用ととる人かおり、副作用は根絶できない。薬害根絶の表現は、厚生省は適切でないと考えている」

 

 官僚の屁理屈のいやらしさがふんぷんと伝わってくる。薬害根絶としたところで薬害をすべての副作用だと拡大解釈して厚生省が全副作用の根絶の誓いをたてたとはだれも考えはしまい。

 

 薬には副作用があることはがれでも知っている。しかし、血液製剤によるHIV感染は副作用といってすむようなものではない。「命を奪う毒」とかつて血友病患者が述べたが、そういうものなのだ。

 

 この「毒」には、HTIVの破壊力に加えて、危険を知りながら対策もたてず、患者をないがしろにした官僚行政の「毒」も含まれる。マスメディアが川内患者の高いHIV感染率を報道したとき、実態を知られ担当者として責任を追及されることをなによりも恐れ、患者のことなど小指の先ほども考えなかった厚生官僚の憎むべき自己保身の「毒」も含まれる。

 

 「薬害」を碑名に入れたいとの気持ちは、頭痛薬や腹痛薬のちょっとした副作用とは比較にならないこれら諸々の「毒」を飲まされ続けた人々の振り絞るような気持ちなのだ。

 

 さらに厚生省は碑文には「薬害エイズ」の文言も被害者数も明記したくないという。理由を前述の中田氏はこう述べた。「碑文にはサリドマイド、スモン、HIV感染の三つを並べているので、エイズだけに薬害とつけるのは不適切です。かわりに碑建立に至った経緯のところに『薬害エイズ事件を厳粛に受けとめ』と書く案が出ています」

 

 中田氏の上司の石塚栄室長、前述の吉武課長の両氏ともに言を左右にして「薬害エイズ」の文言を碑文に入れるのを避けようとしている。

 

 そして一八〇〇人から二〇〇〇人とされている被害者数は「多くの被害者」という表現にしたいというのだ。「厚生宵調査で感染者数が確定されないから」と石塚室長は説明している。

 

 血友病患者総数は約五〇〇〇人。女部英氏の患者は八四年の調査では感染率約五〇%だった。明確な調古結果の出ている大分県佐賀県も感染率は五○%だ。とすると、被害者は二五○○人という計算もできる。確度が低いというなら「一八〇〇人を超える」とか「少なくとも一八〇〇人」という表現でもよいはずだ。「多くの」という漠たる表現では薬害エイズ被害の凄まじさは伝わらない。

 

 また、患者らは碑は厚生省前に建てたいと願っている。薬害を繰り返さないために、厚生省にも国民にもこの悲劇を忘れないでほしいとの気持ちからだ。ミドリ十字はグリスマシンについて重大な嘘の宣伝をしていた。

 

 三好医師の自筆のメモがそれを物語っている。八六年一月二三日付のこの文書は三好医師が別の医師に処方を説明するために書いたものだ。そこには「ミドリ、エイズフリー」と書かれている。法廷で三好医師はこう述べた。

 

 「エイズフリーというのは私の語彙ではありません。たぶん、ミドリ十字の(販売担当の)上島さんから問いた言葉をそこに書いたと思います」

 

 この証言は、当時、ミドリ十字が、グリスマシンの原料となる血漿は、実はアメリカから輸入していたものであったにもかかわらず、「すべて日本人の血液が原料です」と虚偽の宣伝をしていた事実につながっていく。

 

 大阪地検によって逮捕され起訴されたミドリ十字の元社長松下廉蔵氏は、虚偽の宣伝の事実がわかったとき「今訂正するとこれまで嘘をついていたことが世間に知られてしまう。このまま(嘘をつき続けて)いくしかないだろう」といって、役員会で嘘を押し通すことを決めた旨、法廷で述べている。

 

 さて厚生省の責任である。青沼隆之検察官が三好証人に質した。

 

―もし厚生省からグリスマシンによってエイズ感染の危険があるといわれたら、患者に投与しましたか。

 

 「いいえ、しませんでした」

 

ミドリ十字が安全な日本の血液によってつくられていると虚偽の宣伝をしても、厚生省が危険だといえば投与しませんでしたか。

 

 「しませんでした。国の機関の、公の警告を無視して投与することはありません」

 

 血友病患者が揃って厚生省の松村課長をたずねて「非加熱濃縮製剤を回収するよう回収命令を出してほしい」と頼んだとき、冷たく拒否した氏は、法廷で暗い表情で右の尋問を聞いていた。氏が患者の命や安全についてほとんど配慮しなかったことは明白だ。

 

 では、薬害エイズ以来、厚生行政はこの点についてどれほど変わったのか。厚生行政に目立った変化が一つある。「緊急安全性情報」といわれる通達が最近になって急激に増えたのだ。

 

 これは、特定の薬に危険な副作用などがある場合に、安全性に気をつけるように、投与も慎重にするようにという意味で出される警告である。以前は年に数えるほどしか出されなかった同情報が「このごろはすぐに机の上に数センチの高さになるほど出されます」と三好医師は述べた。これは、厚生省や製薬メーカーがこころして薬の安全を目ざしているのではなく、警告を出すことで副作用の事故がおきたときなど、責任を現場の医師に押しつけることが目的だといわれている。

 

 真に薬の安全性を目ざすのなら、厚生省とメーカー間の天下りをきっぱり廃正し、癒着をなくすこと、薬事審議会での新薬の承認のプロセスを透明化することなどが必要だ。このままでは必ず、再び三度、薬害が発生するだろう。

 

 

 

薬価差を必死に守る厚生省と製薬会社

 厚生省の「薬価差問題プロジェクトチーム」が一九九六年六月末に中間報告を出しか。四月に菅直人厚生大臣が薬価差を解消することを目標に設置したのが同プロジェクトチームだ。中間報告は「当面は現行薬価基準を維持する」との結論を出しか。

 

 中間報告というかたちになっているが、これは事実上の最終報告に等しい。菅大臣の薬価差を解消すべきだという考えは、岡光序治前保険局長(七月から保険局長は山口剛彦氏になった)以下、同チームの構成メンバーである厚生官僚によって、正面から否定されたことになる。彼らの下した結論の背景には、全国で八一八社という世界に類例のないほど多い製薬会社の強い意向があるといえる。

 

 だが、製薬メーカーがいかに反対しようとも、現在の薬価基準に基づいた薬価差が日本の医療の姿を歪めているのは否定できない事実だ。

 

 また薬害エイズの場合、非加熱濃縮製剤のもたらす大幅な薬価差が病院に大きな収益をもたらしたために、医師らが患者に同製剤を使わせ続けたと指摘された。薬価差があるために、日本の医療は不必要な薬も含めて大量に投与され患者を薬漬けにしている。

 

 その結果、国民医療費に占める薬剤費が三〇%という薬偏重のいびつな現状が生まれている。

 

 いわば諸悪の根源である薬価差を、なぜ製薬メーカーは維持したいのか。その理由は、彼らの九五年度の決算書をみれば一目瞭然だ。

 

 自治体病院共済会の調査によると、製薬メー力1はここ数年の不景気にもかかわらず、九五年度の決算も史上最高の利益を確保している。

 

 例えば最大手である武田薬品工業の経常利益は、九一七億九一〇〇万円である。この数字は、例えばシャープや富士通など成長株である情報通信機器メーカーの大企業の利益を軽く超える。

 

 製薬企業トップ五○社の九五年度決算の経常利益の合計は九八五四億円余り、なんと一兆円に迫る勢いである。刈前生度比では九一・四%増、刮目に値する成長率だ。製薬メーカーの経常利益は他の業種の利幅圧縮の惨たんたる現状に比べて、きわめて異色の姿をみせている。

 

 彼らは全国で五万五〇〇〇人にものばるMR(薬剤の販売社員。病院や医師を訪れ、医薬品の効能を説き、薬剤を売り込むスタッフ)を使って、薬剤の拡販にいそしむ。MRは往々にして公私を問わず医師につかえ信頼を獲得し、自社の薬剤を購入してもらうよう働きかける。

 

 MRの数は、約二四万人いる令国の医師、四人につきおよそ一人の勘定になる。MR一人にかかる人件費が年間一〇〇〇万円としても、全体で五○OO億円を超えるコストとなる。人件費は当然、薬代に含まれているから、国民医療費の中の総額八兆円といわれる薬剤費に含まれ、私たちの負担となっている。

 

 一方で、それはどの数の売り込みスタッフを抱えながら、日本の製薬企業の実力は、国際比較するときわめて貧弱だ。世界に通用する薬剤を、どれほど自社開発してきたか。

 

 健康保険で支払ってもらえる薬剤、いわゆる薬価が定められている薬品は現在一万二九〇〇余品目あるが、このなかでも世界に通用する日本の薬剤はメバロチン田辺製薬のヘルベッサー、藤沢薬品工業プログラマの三品目くらいしかないといわれている。

 

 研究開発が遅れており、先進国のなかでただ日本一国のみが、薬剤に関しては大幅な輸入超過である。

 

 効き目のある薬の独白開発ができていないという、きわめて土台の不安定な製薬業界が、他の産業の不振をしりめに史上最高益を謳歌できるのが、薬価差のおかけなのである。

 

 そして、薬価差を支えているのが国民皆保険である。どんなに法外な薬価でも、規定どおり黙って払ってくれる健康保険制度の枠のなかで、薬価差の大きい薬ほどより多く患者に投与されてきた。

 

 だが、今健康保険制度そのものが揺らいでいる。健保組合の九割が赤字に転落したという非常事態のなかで、財政面からも薬価差は許容されなくなり始めたのだ。プロジェクトチームの「薬価間題は当面現状維持」との結論は、そのような現状を無視したもので、害あって益なしの時代の流れに逆行する結論である。 

菅大臣の目を盗み文書を書き換えた官僚

 九六年六月二五日の『毎日新聞』の小さな記事を読んで驚いた。薬害エイズ禍を教訓として薬害再発を防止するために、厚生省プロジェクトチームが菅直人大臣に提示した薬事行政改革案が、内容不十分として突き返され再検討されていると報じられていた。

 

 大臣に提出された改革案では、現在の医薬品の審査体制のあり方について、基本的に問題なしとしているのだそうだ。審査にあたる厚生省薬務局審査課の職員はおよそ四〇人だが、実質的な審査は中央薬事審議会で行なわれており、そこには約五〇〇人の委員がいる。この方式によって「常に最新の情報に接することができる」と高い評価を下し、改革の必要なしとしているのが、大臣に提出された改革案の柱である。実に呆れた話である。

 

 この審査方式の最大の間題点け、薬事審議会の委員が、製薬会社の依頼で新薬の臨床試験を担当する例が少なからずあるという点だ。

 

 審議会の委員である大学教授に、製薬会社が「研究協力費」なる資金を提供しているケースは数えきれないほど多い。現在は社会の批判や監視の目が厳しくなり、「研究協力費は以前ほどはない」と証言する関係者もいる。しかし、製薬業界から医療専門家への資金の流れは、「よりインフォーマルなかたち」をとって維持されているといわれ、実態はさほど改善されたとはとうてい思えない。

 

 そのような風土の中で、いったん新薬の臨床試験が始まると、メーカー側は自社の新薬を承認してもらうために、臨床試験の総括医の人選には特別気をつかう。なんといっても総括医は、その薬の総合的評価を下寸立場にあるのであるから、よい評仙をしてもらわなければならないからだ。メーカー側は常日ごろから関係の深い専門家や医師を、総括医に選ぶのが普通だ。

 

 薬害エイズの場合、加熱濃縮製剤の総括医は当時、帝京大学副学長の安部英氏たった。氏が加熱濃縮製剤の治験の時期を調整し(遅らせ)薬害エイズ禍を広げたということは、すでに広く指摘されている。その安部氏に対して製薬メーカーは、国際的な血友病関連のシンポジウム開催の費用を「賛助金」という名目などで支払っていた。また、安部氏の財団設立に際しては一〇〇〇万円単位の寄付金を出した。

 

 このような癒着構造のなかで、新薬の臨床試験が行なわれているのだ。そしてそれを承認するか否かを審査するのが、中央薬事審議会である。同審議会のメンバーと臨床試験担当医や総括医が同一人物であるなら審議会には審査をする資格などあるはずがない、というのが常識であろう。

 

 それを厚生省のプロジェクトチームは「間題なし」と結論づけた。答えを書く人間と採点する人間が同一であるような仕組みを、変える必要なしとするのは、一体どういう理由によるものか。

 

 この一件からすぐに思い出しだのが五月三一日の菅大臣の記者会見だ。菅大臣が一連の薬害エイズ禍の責任を問うために、厚生官僚は製薬メーカーには天下りを自粛する、との内容を発表したとのことだ。

 

 記者団に配られた資料は、しかし、大臣の手元にある資料とは異なっていた。大臣の手元の資料には記載されていなかった「当面」の二文字が、記者に配布された資料には以下のように付け加えられていたのだ。「厚牛官僚の関連企業への天下りは当面自粛する」

 

 「当面」という二文字が入ることによって厚生官僚の製薬メーカーへの人下りはいつか復活することになる。だが菅大臣の指示は、以後、一切の人下りを禁止することだった。

 

 官僚は自分たちの天下り先を確保し続けるために、大臣の日を盗んで「当面」という二文字を加え、それをマスコミに配ったのだ。しかも大臣には二文字抜きの資料を渡すという狡猾さである。

 

 自らの利益を守るためには、なんでもしてしまうこの体質の人々が、今回の改革案を提出したプロジェクトチームの人々である。そして恐ろしいことは、プロジェクトチームのメンバーのみならず、おしなべて厚牛官僚は同じような体質に染まっていると思える点だ。

 

 その典型が薬務局長時代にサリドマイド被害を出し、誤ちは繰り返さないと誓った元薬務局長松下廉蔵氏である。氏は厚生省を退任してミドリト字に天下ってからは、同社社長となった。薬害への反省など早々に忘れ去り、民間企業の長として、今度は企業の利益を優先させることによって薬害禍を拡大させた。

 

 厚生省薬務行政の徹底的改革が必要とされる。