錠剤には、いろいろな特徴があるので、要チェック

 薬剤として、もっともポピュラーなものは「錠剤」です。

 丸い錠剤から平らな錠剤、なかには下駄のように細長い錠剤まで、さまざまな形の錠剤が作られています。また、小さなものから大きなものまで、いろいろな大きさがあります。一般に売られている風邪薬や胃薬は、約300~500mg(O・3~O・5g)の重さの錠剤です。大ざっぱな概念として、粉末の薬の耳掻き1杯の量は、約10mlです。これは一つの目安として、知っておいていただいてよいかと思います。

 風邪薬や胃腸疾患の治療薬の外箱を見てもらえれば、錠剤に含まれている有効成分の含有量が書かれています。ふつう、その有効成分の全量と錠剤の重さとの間には差があります。その差が、助剤の量になります。

 話が少し横道にそれますが、錠剤の作り方について説明しておきます。

 化学物質である薬の粉をもってきて、それだけで錠剤を作ろうとしても、どっこいそう簡単にはできません。

 粉末の薬をある大きさにまとめるために「結合剤」を加え、さらに錠剤が壊れるための「崩壊剤」を助剤として加えてステンレス製の臼に入れ、上からステンレスの杵で圧力をかけて打ちつけ、1回きりの餅つきをして錠剤を作ります。結合剤と崩壊剤という助剤は、正反対の作用を持っていますが、この2剤の配合をうまくコントロールすることによって、いろいろな錠剤ができているのです。


*素錠(裸錠)

 一般には、乳糖を助剤として使って薬の粉と混ぜ合わせた後、打錠して錠剤を作ります。打錠したままの錠剤を、「素錠あるいは裸錠」と言います。胃薬などがその典型例です。素錠の特徴は、飲んだ後、胃ですぐに壊れ、薬が速ぐ溶けだす点にあります。

 逆に素錠の欠点は、錠剤の角が壊れやすいということです。ピルケースなどに入れて持ち運ぶ時は、ティッシュベーパーですきまを埋めてください。そうすれば、多少動いても壊れません。

糖衣錠

 素錠の表面をショ糖などで丸くコーティングした錠剤を「糖衣錠」と言います。糖衣錠は素錠とちがい、角がとれて丸みのある形になっています。

 素錠を口に入れると、苦くて飲みにくいというような場合、糖衣錠にしてあると飲みやすくなります。

 また、糖衣錠は空気と水分を通しやすいので、それらを遮断するためにコーティングを施す場合もあります。素錠に入っている薬の粉を、空気中の湿気や酸素などから守るため、実用的には、糖衣錠の外側をフィルムコーティングすることで保護してあります。

 特に、フィルムコーティングを施した糖衣錠は、新車の自動車のように、ピカピカに光っているので、使用者に対して「効く」というイメージを与えます。また、高貴薬としてのイメージアップも狙っています。


 このようなさまざまな飲み薬(薬剤)から薬が吸収される速さを、一般的に表現すると、次のような傾向があります。ドリンク剤 ∇ 粉末の薬、顆粒薬剤 V 錠剤、カプセル剤

 ただし、抗てんかん薬のフェニトインは、錠剤のほうが粉末の薬よりも、吸収が速く、循環血液中のフェニトインの濃度が、速やかに上昇することが知られています。