薬剤は飲みすぎると危険

 

ドリンク剤は、本当に速く効くのか

 読者の皆さんは「クスリ」と呼ぶ時、何を指してそう呼んでいますか?

 日常で「薬」という場合、その意味は極めて曖昧です。ある人は製品である薬剤を「クスリ」と呼び、ある人は薬剤の主成分である薬を「クスリ」と呼んでいます。

 状況をより複雑にしているのは、薬には「薬名(一般名)」と「薬品名(製品名・商品名)」があることです。世界的に通用するのは、一般名ですが、日本の医院・病院などで処方される時の薬剤情報では製品名・商品名が使われることが多いようです。

 そして現在、薬剤の種類にはさまざまなものがあります。

 錠剤、カプセル剤、貼り薬、坐剤、塗甘楽、点眼薬など、すべての剤形をひっくるめて薬剤と呼んでいます。

 薬学の世界には「医薬品添加物」、あるいは「医薬品用賦形剤」と呼ばれる「助剤」があります。この助剤は、薬理作用をまったく持だない化学物質です。この助剤と薬を混ぜ合わせることによって薬剤が作られます。

 製薬会社が、このモノ作りを企画する場合、一般に二つの面から作業を進めます。 一つは「循環血液中に薬を吸収させて効かそう」という立場、他方は「適用する体の部分に限って薬を効かそう」という立場です。専門用語で言えば、前者は「全身作用型の薬剤」、後者は「局所作用型の薬剤」という表現になります。

 したがって、全身作用型の薬剤は、いかに効率よぐ薬を循環血液中に送りこむかということが、「効く」商品と「効かない」商品との別れ道になります。

 いっぽう、局所作用型の薬剤は、適用した部位に薬を効率よく、かつ長い時間とどめることにより、よく効く薬剤を作ることができます。

 薬がどうその効果を現すかは、前に説明したように、飲み薬の全身作用型の薬剤は、まず、胃で薬剤から薬が溶けたさなければなりません。

 しかし、薬はカプセルに入っていたり、錠剤として固められたりしています。中身の薬が溶けだすために、カプセルは溶けるように、錠剤は壊れるように作られています。錠剤が壊れて小さな破片になった後、各々の破片から薬が溶けだし、液状になって、初めて薬は小腸から吸収され、循環血液中に入ります。

 ドリンク剤(液剤)のように、はじめから液体になった薬を飲むと、胃で溶ける必要がないので、飲むとすぐに小腸から吸収されます。

 したがって、錠剤、カプセル剤に比べると、「ドリンク剤は薬の効果が速くでる」ということは間違いありません。

 しかし、1955年頃、アンプル入りの風邪薬による、ショック死事件が起こりました。これは、発熱で全身がだるいという人が、早く風邪を治したいと思い、アンプル入りの風邪薬を決められた量以上に何本も飲み、急激に循環血液中の薬の濃度が上がり、ショック症状を起こした悲劇でした。薬剤は、決められた量を守らなければいけないという警鐘です。