乗り物酔い防止の貼り薬がある

 

 1980年代の前半から、乗り物酔いの治療薬としてスコポラミンの貼り薬が、欧米で使用されるようになりました。残念ながら日本では販売されていません。日本では、心臓病、狭心症の予防薬であるニトログリセリンを含んだ貼り薬(商品名ニトロタームTTS、ミリステープ、バソレーターRB、ヘルツァーSなど)が使えるようになりました。

 これらの貼り薬は、皮膚の局部的な疾患の治療のために使われるのではありません。貼った後、ニトログリセリンが皮膚から吸収され、循環血液中に入り、心臓に作用して狭心症の発作を防いだりします。貼り薬であるにもかかわらず、このような全身的な効果を持ち、非常によく使われるようになりました。

*全身作用型の貼り薬のメリット

 全身に作用する貼り薬の特徴には、次のような点があります。

 皮膚は、体を外部の細菌などの危険因子から守るために存在します。

 皮膚に貼った薬剤から、ニトログリセリンなどが吸収される速度は、非常にゆっくりになります。したがって、1回貼れば1日以上効いたり、1週間近く効果を持続させたりすることもできます。

 飲み薬とちがい、皮膚に貼って薬を吸収させますので、消化管(胃腸)障害を起こしません。飲み薬だと、吐き気、胸やけを感じる胃腸系の弱い人でも使いやすい薬剤です。

 子供や寝たきりのお年寄りに、薬剤を口から飲まそうとすると、非常に難儀をすることがあります。しかし、貼り薬ならば、何も文句を言わずに簡単に貼らせてもらえます。薬を必要としなくなれば、素早く剥がすことで、治療を中断することもできます。

 しかし、貼り薬を使う場合、注意していただきたいことがあります。一度、貼って剥がした部位に、すぐ新しい貼り薬を貼らないでください。剥がす時、皮膚の表皮が剥がれたり、体毛が抜けたりします。そうすると、皮膚に対する薬の透過性が上がり、必要以上に薬が速く吸収されてしまいます。貼る度に、場所を変えることが肝心です。