使い残りの点眼液は、どうすればよいでしょうか?

 感染症の病気に用いた点眼液は、必ず、残さずに捨てましょう。また、絶対に家族や友達に譲ってはいけません。友人や家族に感染症を移すことになります。感染症以外の病気に用いた点眼液は、使用後、冷蔵庫に保存しておけば、使用期限内であれば、1年後でも使えます。ただし、本人に限ります。

 また、眼科用の代表的な固形剤に、眼軟膏があります。

 これは、粘り気があり、目の粘膜につけた後、ネバネバして非常に不快な感じがします。しかし、感染症の場合は、抗生物質入りの眼軟膏のほうが点眼液よりも長く眼内にとどまり、1日当たりの使用回数を減らすことができます。ただし、目がネバつきますので、不快感が残ります。

 眼科医は、ガラス棒の先に眼軟膏をつけ、目の粘膜に塗りつけます。しかし、自分で目の粘膜に眼軟膏をつける時は、こういう道具がないので、なかなか大変です。

 私は、ティッシュペーパーを3~4回ほど折りたたみ、その角に3mgほど眼軟膏をつけ、鏡を見ながら下まぶたの粘膜につけています。眼軟膏をつけた後、2~3分ほど目を閉じてじっとしています。抗生物質の点眼液だと、1日に数回点眼しなければなりません。しかし、眼軟膏だと投与回数を減らせます。

 眼軟膏よりもさらに薬を長時間効かそうという目的で、下まぶたに挿入する薬剤が、かつて日本でも市販されていました。オキュサートという名前で売られていました。

 高血圧症の人は、眼圧が高くなる「緑内障」という病気が心配されます。この緑内障の人は眼圧を下げないと目の痛みは止まりません。塩酸ピロカルピン(商品名サンピロ)という、眼圧を低下させる特効薬があります。

 しかし、塩酸ピロカルピンの点眼液は、1日に何回も点眼しなければなりません。そこで1回、下まぶたに挿入すれば、主薬の塩酸ピロカルピンを1週間にわたって放出して眼圧を低下させ、快適に過ごせるように開発されたのがオキュサートでした。 欧米では、オキュサートが受け入れられています。しかし、日本ではあまり人気がありませ
んでした。どうも、日本人は神経質すぎて、下まぶたに挿入している違和感が気になり、人気がでなかったようです。

 このことにも、日本人と欧米人の薬剤に対する考え方、文化のちがいが現れているように思われます。欧米人は「薬というものは副作用、多少の不快感はつきもので、薬が効いて病気が治ればそれでよし」と考えています。ところが、日本では「使っていても、まったぐ普段の生活と変わりないのがよい薬剤」という考え方が一般的です。

 このようなことから、眼内に挿入する徐放性薬剤が、いまいち日本人に受け入れられなかったものと思います。