注射は、どこに打っても同じ効果があるか

 

 では、体のどの部分に注射薬を投与しても、薬は同じように速く吸収されるでしょうか? 答えは、ノーです。

 皮下注射と筋肉内注射では、薬の吸収される速さがちがいます。筋肉内注射の場合でも、投与する部位(場所)によって、薬の吸収される速さに差がでます。

 抗不整脈薬のリドカイン(商品名キシロカインなど)を、筋肉内注射で投与したところ、注射する部位によって、循環血液中の薬の濃度に差がみられました。

 腕に筋肉内注射した場合、循環血液中の薬の濃度がもっとも高く、その次が足のふとももでした。お尻に注射した場合、循環血液中の薬の濃度が一番低かったというデータがあります。これは、腕の筋肉への血液の流れが多いのに対し、お尻の筋肉は血管の発達が乏しいため、薬の吸収にとって不利であるというわけです。

 さらに、リドカインは体内の脂肪組織への付着が強いため、筋肉内に長くとどまり、筋肉量の多いお尻から、循環血液中へ入っていった薬の量が減ったことも一因になっています。

 セファロリジン(商品名ケフロジン)という抗生物質をお尻、ふとももに筋肉内注射して比べたところ、ふとももに筋肉内注射した時のほうが、薬は速く吸収されるという研究結果も得られています。

 また、女性では、お尻に筋肉内注射すると、薬の吸収量が不十分だった、という研究結果も知られています。

 しかし、世の中、何事にも例外があるように、薬の世界にも例外があります。水に溶けにくい薬の場合、筋肉内注射で投与しても、薬の効果が飲み薬よりも遅くなるということがあります。

◆「注射した部分を揉んでください」と言われるのは、薬の吸収をよくするため。

◆予防注射のような皮内注射の時は、揉まないほうが賢明。