Q 私は薬学部を目指して勉強していますが、製薬会社の新薬の開発に参加し、最初に新薬を飲む人は誰なのでしょうか? (17歳 学生 東京)

Q 私は薬学部を目指して勉強していますが、製薬会社の新薬の開発に参加し、最初に新薬を飲む人は誰なのでしょうか? (17歳 学生 東京)

 あなたもいずれ知ることになると思いますが、製薬会社は、新薬を開発する時、まず、実験動物を使って薬の効き目はどれくらいか、さらに毒性がないかどうかに関するデータを大量に集めます。

 この動物実験で、確かに効く、絶対安全だということがわかると、次は人間で薬剤の安全性を確認しなければなりません。

 その試験を「臨床第1相試験」と呼びます。

 この臨床第1相試験では、健康な成人男子のボランティアに新薬を飲んでもらいます。

 動物実験ではわからなかった、副作用があるかないかを調べます。また、薬剤の投与量を増やしていった時、薬が吸収された後、循環血液中の薬の濃度が正しく投与量に比例して上昇するかどうか、薬剤を繰り返し投与しても薬の異常な蓄積がないかどうかを、科学的に明らかにします。

 そのため通常、動物実験のデータから判断し、安全と思われる投与量からスタートします。おおよそ、実際の患者さんに投与する量の1/50から1/20の投与量を飲んでもらいます。このボランティアになる人を「創薬医学ボランティア」と呼びます。

 ふつう、20歳以上の社会人、学生がボランティアで新薬を飲み、その薬剤の有効性と安全性を確認します。この試験に先立って、ボランティアになる人は、新薬の生い立ちや、その意義飲む方法などについて詳しく説明を受けます。その上で、インフォームドーコンセントと呼ばれる同意書にサインをし、試験に参加します。

 万一、ボランティアになった人が、副作用で被害を受けるような場合には、保険で補償が行われます。その補償内容についても、文書で説明を受け、納得した人が試験に参加しています。私たちが病気になると、医師に薬剤で治療してもらいます。薬剤を飲む時、その薬剤が安全であるということが、あらかじめわかっているから安心して飲めます。薬剤の安全性を証明するために、ボランティアの人たちが貢献してくれたから新薬が作られているのです。

 若い人たちは、将来、病気になれば薬剤の恩恵を受けます。彼らがボランティアとなって新薬の安全性に関して「本当に人間で安全であるかどうか」という試験に貢献することは、大変有意義なことです。