注射にも効き方のちがいがある

 

注射薬は、投与する部位で効き方がちがう

 さて、前に説明したように、薬剤を飲むより注射のほうが速く効くことがわかっています。

 ですから、注射薬は、即効性を期待して使われます。そこで、注射薬を投与する場合には、静脈中に直接投与する静脈内注射と、筋肉内もしくは皮下、皮内にそれぞれ投与する筋肉内注射、皮下注射、皮内注射とがあります。

 筋肉内注射は、皮下組織の下にある黄紋筋に薬液を投与します(233ページの図参照)。注射部位の近くに毛細血管がきているので、静脈内注射に次いで全身作用が速やかに現れます。

 皮下注射は、皮膚のすぐ下にある脂肪組織に薬液を投与します(同図参照)。

 注射後「注射した部分をよく揉んでください」と言われます。それは、揉むことで注射した部分の血液の循環がよくなり、薬の吸収をよくする効果が得られるからです。薬の効果は、静脈内注射や筋肉内注射よりも少し遅れます。しかし、効き目が持続します。

 皮内注射は、予防接種などでよく使われています。皮内注射は、注射した部分を揉んではいけません。それは、揉むことでワクチンの成分が、速く循環血液中へ吸収されすぎるという危険があるからです。

 静脈内に直接投与する場合は、高度な知識と熟練を必要とします。なぜならば、あまりにも速く短時間で投与をすませると、気分が悪くなったり、むかついたりといった副作用がでるからです。

 一般に「注射は飲み薬よりもよく効く」と言われます。しかし、「速く効く」という表現が当たっています。

 たとえば、解熱・鎮痛薬の場合は、薬はあらかじめ溶けた状態なので、投与後、薬は素速く循環血液中から拡がり、脳の解熱中枢に達し、薬の効果が速くでるからです。