微少変化型ネフローゼ症候群


 組織学的に腎糸球体の変化が、光学顕微鏡のレベルで、「微少」~ほとんどみられないネフローゼ症候群を、微少変化型ネフローゼ症候群といいます。原囚は現在のところよくわかっておりませんが、リンパ球から産生されるリンフォカインという刺激物質が原因の1つとして疑われています。

 全く誘因がなく、あるいはときに上気道感染や朧痛を伴って突然浮腫、特に顔面の腫みで発症します。同時に尿量が減少し、体重が数日のうちに数㎏~10kg以上増加します。血尿は肉眼的にも顕微鏡的にも通常みられません。高血圧もみられません。

 小児に多い疾患で、小児のネフローゼ症候群の70%程度を本疾患が占めます。副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)が非常に有効ですが、ステロイド剤の減量途中で再発する例もまた多くみられます。小児科では、非常によくみられる疾患ですから、ネフローゼ症候群に対しては、先ずステロイド剤が投与されてその効果を確かめます。

 ところが年長児や成人ではネフローゼ症候群の原因として、微少変化型ネフローゼ症候群、膜性腎症、さらに巣状硬化症などが、ばぼ同じような比率でみられ、それぞれステロイド剤の効果や腎機能の予後が異なるため、先ず、腎生検を施行して、原因を確認する必要があります。

 微少変化型ネフローゼ症候群は、ステロイド剤に非常によく反応し、すみやかに蛋白尿が消失、または減少し、浮腫もひきます。しかしステロイド剤を徐々に減量していく過程で、しばしば再発することがあります。このような場合、ステロイド剤を増量し再び蛋白尿の消失をみて、前回よりも減量を慎重に時間をかけて行なったり、免疫抑制剤を併用したりして、頻回の再発を抑える方法がとられます。いずれにしても、ステロイドの投与方式に一定の方式はなく、個々の例によって工夫がなされています。ステロイド剤にはよく反応するが減量すると必ずといっていいほど再発してしまう例を、ステロイド依存性あるいは頻回再発患者とよびますが、このような患者さんには、種々の免疫抑制剤が有効で、ステ尸イドの量をでさる
だけ少なくする目的でしばしば使用されます。

 腎生検による組織診断では、微少変化でも全くステロイド剤が効かない例では別章に述べる巣状硬化症との鑑別が重要で、再度の腎生検もやむを得ません。

 ステロイド抵抗性微少変化型ネフローゼ症候群や巣状硬化症などで、新しい免疫抑制剤であるサイクロスポリンが有効な場合があります。

 微少変化型ネフローゼ症候群は、予後良好な疾患で、腎機能は低下することかおりません。ただし、繰り返しになりますが、頻回に再発することで、入院期間が長くなったり、ステロイドの副作用が出現するなどの問題がみられます。