水疱性類天疱瘡bullouspemphigoid〔ＢＰ〕

　〔同義語〕pemphigus chronicus　vulgaris benignus〔Lever1951〕、 deTmatitis herpetiformissenilis/pemphigoid〔Rook & Waddington〕、 Alterspemphigus(Steigleder〕、 parapemphigus〔Prakken & Woerdemann〕

　〔症状〕比較的疱膜の丈夫な大型の水疱が多発、破潰後のびらん面の治癒は良い。特に大腿上腕内側、臍、腋窩、鼡径、胸背部に好発。粘膜は通常侵されない〔ときに口腔に：desquamative gingivitis〕。

〔表皮下水疱　Ｅ：水疱蓋(表皮)、Ｂ：水疱、Ｄ：水疱底(真皮)]

　［病因］基底膜部〔lamina lucida〕にIgG ・ 補体沈着〔C3〕あり〔付図15-5〕。血清中に抗基底膜部抗体が存在する〔自己免疫性〕。

　〔組織所見〕表皮下水疱(subepidermal bullae)。

　〔予後〕経過は緩慢に進行し、数～10年に及ぶ。ステロイド剤により死亡は激減したが、高年者であること、気管支肺炎のような合併症などから死亡に至ることがある

　〔死亡率30～40％〕。

　〔治療〕ステロイド剤によるが、大量を要せず〔初回20～40mg〕、早期に離脱を図ることが大切。免疫抑制剤・金剤・ＤＤＳも有効。高年者が多いので脱水・栄養一二次感染に注意。

　　　瘢痕性類天疱瘡cicatrical pemphigoid、 良性粘膜類天疱瘡benign mucosalpemphigoid、 pemphigus conjunctivae : 結膜・口腔に反復して水疱形成、瘢痕性に治り、外反瞼・睫毛乱生・角膜混濁〔失明〕・眼瞼癒着、口腔・咽喉・食道・外陰部粘膜の瘢痕化を残す。 1/3に皮疹を発生。高年者に多く、ＲＡ・内臓悪性腫瘍を合併することあり■ IgG　のlamina lucida への沈着。

Side Memo

　水疱症に内臓悪性腫瘍の合併をみることがある。

　1）ジューリング疱疹状皮膚炎…子宮癌・胃癌・腸癌・肺癌・ホジキン病一白血病、２）類天疱瘡…膵癌・気管支癌・胃癌、3）天疱瘡群…悪性リンパ腫・子宮癌・乳癌・気管支癌・悪性胸腺腫、4）妊娠性疱疹…絨毛上皮腫。

　①自己免疫疾患患者における免疫異常〔腫瘍免疫監視機構の異常〕、②自己免疫疾乱患者にステロイド・抗腫瘍剤のような免疫抑制剤を投与することによる腫瘤免疫の低下、③リンパ細網系腫瘤における免疫機構の異常による自己免疫疾患の発生、④悪性腫瘍で生成されたlgG型抗上皮抗体による天疱瘡の発生などの機序の解明は興味深い。