絨毛癌発生のリスク

経過非順調型のものは、絨毛癌続発のハイリスク状態である。

 絨毛癌は正常の分娩、流・早産などからも続発するが、その約6割は胞状奇胎に続発する。

 一方、胞状奇胎を掻爬した後、化学療法など一切の治療をしないままで

胎(非順調型の経過をたどるもの)ある卜は40歳以上の症例の絨毛癌続発のリスクは高いと考えてよい。

            絨毛性疾患の治療

 絨毛性疾患の治療に当たっては、まずそれが胞状奇胎であるのか絨毛癌であるのかを鑑別することから始まる。

 胞状奇胎と絨毛癌との鑑別は、組織学的な方法で行うのが原則である。しかし、組織診断の得られないケースが多いこともこの疾患の特徴のひとつであり、このような場合には表2のような絨毛癌診断スコアを用いて胞状奇胎であるか絨毛癌であるかの臨床的鑑別診断を行う。

 もし胞状奇胎であって、奇胎娩出後のhCG値がI型をとるような経過なものであれば、その後の治療は不要であり予後もよい。これに対して、絨毛癌であれば、手術と併用してきわめて強烈な化学療法を行っても、なお不幸な転帰をとるものが少なくない。

 ごく基本的なことだけを述べれば、胞状奇胎の場合は、子宮摘出は行わない。ただし40歳を越えているような場合には、続発変化の予防のために子宮摘出を行うのが一般的である。

 これに対して、絨毛癌の場合には子宮全摘を行うことによって病巣の除去絨毛癌であれば、手術の有無とは関係なく、腫瘍の消失あるいは完全寛解を目的として、化学療法を行うべきである。

 絨毛癌以外の絨毛性疾患でも、胞状奇胎娩出後の尿中hCG推移がII型であるもの、あるいは1型であっても40歳以上の患者などは、化学療法の適応となる。

 また、絨毛性疾患に対して広く使用されている化学療法剤がある。胞状奇胎に対しては、副作用が比較的少ないものを使うのが原則である。しかし、絨毛癌であれば、最初から治療効果を考慮した薬剤を選択すべきである。そうした意味で、私どものところでは、現在、絨毛癌に対しては好んでMEA療法を用いている。

 いずれにしても、胞状奇胎娩出後の管理での寛解の判定は、尿中hCG値がLHレベルを4週間以上継続し、臨床的に病巣の存在などの異常を認めない場合を寛解状態とする。

 これに対して、絨毛癌では、 hCG値がLHレベルであり、かつ細胞効果を認めないこと、病巣が見られないこと、さらにβ- hCG、β-hCG -CTPがカットオフ値以下であることなどが寛解判定基準となる。しかし。これは十分条件ではなく、絨毛癌の寛解判定基準についてはいまだ統一した見解が得られていないのが現状である。