医療サービス:点数表の構成について


 点数表は無数に近い項目で構成されているが、基本的には直接費を医師の診療行為に配分し、さらに共通費を何らかの基準で診療行為に配賦して上乗せしていると推測される。なお、包帯や注射器などの消耗品は消耗品費として特別の項目は設定されてはいないが、各項目に配賦されていると厚生労働省は説明している。

 点数表の構成は、①医師の技術料に相当する項目、②資本財の減価償却補填的料金に大別される。医師の技術料的な項目は、診察料(初診料、再診料など)、診断料、手術料、指導管理料などである。手術料は手術の部位、難易度に応じて細かく規定されていて、技術をある程度反映した配分である。手術料等が医師等の人件費をベースとして設定されているとしても、その他の費用が含まれていることは間違いない。手術点数が純粋な医師人件費だけで設定されたのでは、間接費を回収できないからである。

 資本財の減価償却的料金の代表は検査点数と一日当たり入院点数である。これらの点数は減価償却をベースとして公正報酬が加算され、さらに検査技師の人件費、看護師の人件費その他の経費が上乗せされていると考えられる。なお、入院料は1人当たり看護師の担当患者数も考慮して決定されている。

 直接費、間接費の配賦が適正に行われていれば問題はない。ところが、薬漬け・検査漬け医療と称されるように検査が頻繁に行われている。これは慎重を期してということの他に、検査が高収益であること(検査差益)が存在するためであるように推測される。半世紀近く原価計算なしで医療費改定が行われてきたので、検査点数が高収益かどうか正確にはわからない。しかし、損をしてまで不必要な検査は行わないであろうから、検査が頻繁に行われるのは検査差益が存在することの傍証となるであろう。

 以上のような点数表に対して、日本医師会等から医師の技術料が不当に低く評価されているとの批判がある。これも原価測定が行われていないから技術料が不当に柢いかどうかの確認は難しい。ただ、その可能性があることも否定できない。

 技術を適正に評価することは医師に医療の質を向上させるインセンティブを与えるであろう。しかし、日本の医師は経営者(開業医)あるいは給与所得者(勤務医)のいずれかであり、オープン型(独立開業している専門医が病院施設を借りて自分の患者に入院治療を行うシステム)のアメリカのように医師報酬と病院報酬を厳密に区分する必要性は乏しいように思われる。開業医にとっては医業経営の安定が確保されればいいわけであるし、名医を自認する勤務医は病院経営者との交渉を通じて高い処遇を得ればいいのではないだろうか。

 いずれにしろ、点数配分が適正かどうか疑われる点に点数表の問題がある。不適正な配分の原因は点数表の項目が多すぎることにある。コンピュータが発達しており、無数の項目を寸分の狂いなく順序付けすることは可能なようにも思われるが、診療行為の難易度は必ずしも数量化しうるものばかりではないから、正確に順序付けるのは不可能であろう。このような観点からも診療報酬の全面的改革が求められる。