MSの役割


 MSとは、マーケティング・スペシャリストの頭文字。製薬企業の医薬情報担当者の名称がプロパー(宣伝する人の意味)からMRに変わったのに対応し、卸業界でもセールスからMSへと名称を変えたものである。

 日本の医薬品卸売会社で働くMSは三万二〇〇〇人を超えると推定され、主として小病院、診療所、調剤薬局などで医薬品のセールス活動に従事している。

 セールス活動のなかでは価格が大きな要素を占めるはずだが、過去にはMSが価格にタッチできない時代があった。メーカーと卸の間に値引袖償制皮があった時代で、MRが医療機関への納入価と、どの卸に納入させるかを決めていたのである。

 こうした仕組みのもとでは、極端にいえばMSはMRの代理人にすぎず、ただ単に医薬品を病院に運ぶ存在だったといえる。

 この独特の商習慣が独占禁止法に触れるということから、一九九一年四月以降、新仕切価制度が実施された。新制度により、製薬企業は病院への医薬品の納入価格交渉や価格の決定を止め、卸の自主性に任せることになった。

 では、MSにはいまなにが求められているのだろうか。

◆医学・薬学の知識

 MSにとってセールスの基礎になる医・薬の知識は不可欠のはずだが、なかなか研修の時間がとれないのが現実だ。しかしこれからのMSは、基礎知識の有無が優劣を分けることになると予想され、MR同様、研修制度の充実が重要になってくる。

◆価格管理能力

 製薬企業依存から脱却し、医療機関との価格交渉の矢面に立つMSは、いままでの売上高至上主義を転換し、粗利益、債権回収、経費、売掛金などを含めた利益管理意識が必要になってくる。

◆医薬品情報の提供

 製薬企業などが病院などに提供する品質・効能・効果・副作用などの情報は自社製品中心になりがち。しかし(卸は多数の企業の商品を扱っており、企業とは違う独自の情報の提供が可能である。そのためには、迅速に提供できるシステムが必要で、すでに大手卸のなかには情報センターをもち、MSへの支援システムを構築しているところもある。


【ノン・コンプライアンス】指示通りに薬を飲まないこと。副作用をおそれたり、飲み方がわからなかったりするのが原因。このため薬局での服薬指導の必要性が叫ばれるようになった。