副腎癌: Mitotane以外の抗ホルモン剤、抗腫瘍剤での治療

 

Mitotane以外の薬剤のうち抗ホルモン剤としてMethyrapon、 Amino-glutethimide、 Trilostane、 Ketoconazoleなどが副腎皮質癌の治療に用いられている。これらの薬剤はステロイド生合成系酵素の活性を阻害するもので、過剰なステロイドによる臨床症状を軽減させるのには有効であるが、腫瘍に対する抗腫瘍効果はほとんど得られない。 Methyrapon は11βhydroxylaseの、 Trilostaneは3β-hydroxysteroid dehydrogenase の酵素活性を選択的に阻害する。内分泌活性の著しい腫瘍では術前の全身状態の改善にKetoconazoleが有用との報告が散見される。

 Mitotane無効例に対してはいわゆる抗腫瘍剤の投与が種々試みられている。Cisplatinをはじめ、 Doxorubicin、 5-FU、 Vincristine、 Vinblastine、 Cyclophosphamide、 Bleomycine、 Etoposide、 Methotrexateなどさまざまな薬剤の単独ないしは併用療法が行われている。最近の症例数10例以上のこうした報告をまとめてみると、このうちではSchlumbergerらの5-FU、 Doxorubicin、 Cisplatinの併用療法が有効率23%、平均奏効期間19.7ヵ月と比較的良好な成績が報告されている。しかし、有効例(CR1例、 PR 2例)はいずれもMitotane無効例でなく、初回治療であった。

 最近、抗トリパノソーマ薬であるSuraminに抗腫瘍効果があることが知られ、ことに副腎によく集積するため、副腎癌の治療剤として期待されている。副腎皮質ステロイド生合成を抑制し、副腎癌に対する抗腫瘍効果も有することが確かめられている。しかし、 La Rocca ら16)の16例の臨床報告例では、14例と高頻度に凝固系の障害をきたすほか、消化器症状、神経障害、腎障害などの副作用を認めた。また、有効例は2例(13%)のみで奏効期間も2.6ヵ月と短期的な効果であった。

           4.副腎皮質癌の治療と予後

 現在までのところでは副腎皮質癌に対する治療方針は以下の如くに要約されよう。早期に発見して根治的に摘除する。根治手術が不能な症例でも可能な限り外科的治療を積極的に試みる。進行癌では多少の副作用があろうともMitotaneを中心とした化学療法を試行錯誤であれ積極的に試みる。

 外科的切除以外に根治の見込めない本癌においては当然のことながら予後は不良である。表1、2に示した如く、進行癌の平均生存期間はおおよそ7ヵ月から20ヵ月である。また最近の80症例以上まとまった副腎皮質癌の報告を調べると、その5年生存率は、 22% (105例)、 23% (110例)、 25.1%(82例)である。病期が進行しているものほど予後は不良であり、内分泌活性の面でみれば非活性癌の方が予後不良の傾向がみられる。

 副腎皮質癌は早期発見が難しいこと、有効な化学療法がないことなどから予後不良である。有効な抗腫瘍剤の開発と、多施設の協力による多数例での臨床的研究の必要性が痛感される。