フレボトームス熱
I 臨床的特徴
1.症状 通常突然の高熱をもって始まり、前頭部頭痛を伴う。サシチョウバエphlebotomus pappatasiiに剌された皮膚にかゆみのある小丘疹ができ、5日ほど持続する。項部硬直があって、眼球後部の疼痛、特に眼球を圧したとき、または頭部を動かしたときの疼痛が特徴的である。インフルエンザに以て、手、足、背部の筋肉痛がある。顔面は紅潮し、眼球結膜に充血が著しい。高熱は通常3日くらいで下降するが、ときに8日も続くことがある。軽度の白血球減少がある。死亡例はない。
2.病原体 アルボウイルスのブニヤウイルス科のフレボウイルス属に入るフレボトームスウイルス。
3.検査 血中からウイルスの分離。
II 疫学的特徴
1.発生状況 ヨーロッパおよびアフリカの特に地中海沿岸部、中央アジア、インドで媒介昆虫の棲息する地域に流行する。季節的には、4月から10月にかけてしばしば集団的に発生する。特に流行地への侵入者が罹患する。
2.感染源 ヒトの感染源はサシチョウバエによる剌咬である。病原巣はサシチョウバエ、ヒト(アメリカ大陸では齧歯類の報告もある)。
3.伝播様式 サシチョウバエは小形の吸血性の双翅目の昆虫であり、夜間ヒトを吸血する。ウイルスは、サシチョウバエの中で経卵感染して次代に継代されているという。
4.潜伏期 6日以内、通常3~4日。
5.伝染期間 発病後2日間、ウイルスは患者の血液中に存在し、この血液を吸ったサシチョウバエは、7日後にはウイルスを媒介するようになる。この虫は終生媒介性を持つ。
6.ヒトの感受性 普遍的、常在地域の住民は免疫されている。
Ⅲ 予防対策
A 方針
媒介昆虫対策、殺虫剤の使用、忌避剤の使用。媒介昆虫は小さいので通常の防虫網虫症を通過する。
B 防疫
患者が急性期にサシチョウバエに剌されないようにする。媒介昆虫駆除を目的とした環境衛生対策。特異療法はない。
C 流行時対策
AおよびBと同様。