肺炎球菌性髄膜炎

 肺炎球菌による髄膜炎は、どの年齢においても罹患率、致命率が高く、新生児、乳児を除くと細菌性髄膜炎の首位にある。発病は急激で菌血症を伴って全身性感染症の一分症としてあるいは中耳炎など隣接部位の感染巣から波及して起こる。しかし、本菌による特異的症状は見られず、年齢が幼若なほどnot doing well の程度であることも少なくないので、説明のつかない発熱で特に痙攣を伴う場合、髄液検査によって初めて診断されることもある。一般には発熱、嘔吐、嗜眠、髄膜刺激症状をもって発病し、痙攣を伴うが、進行が速やかで来院時死亡dead or arrivalも経験され髄液、血液培養の結果、本菌による髄膜炎と判明した例も時折見られる。ハイリスク群、特に脾摘や免疫不全患者に好発する。

 肺炎球菌のうち成人では番号の若い血清型1、 2、 4、 5、7、 12型など小児では3、 6、 14、 18、 19、 23型による髄膜炎が多い。

 病原診断は塗抹染色によるグラム陽性莢膜を有する双球菌、抗血清を用いた莢膜膨化試験(quellung reaction)、莢膜抗原検索(対向流免疫電気泳動法、その他による)に加えて、培養で確認する。臨床材料としては髄液、血液が重要である。濃縮尿でも抗原検索は可能である。

 特殊療法はペニシリンG静注が第一選択剤であったが、近年肺炎球菌のペニシリン低感受性株および高度耐性株、多剤耐性株の出現にかんがみ、感受性テストが必須になった。PC耐性株はセフェム系感受性も低下しており、セフォタキシムCTXに対する感受性を確認すべきである。バンコマイシンを選択せざるを得ないこともある。

 ハイリスク患者には23価肺炎球菌ワクチン投与を考慮する。