レスベラトロールは多発性硬化症患者に有害

多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)を抱える人は、レスベラトロール(resveratrol)のサプリメントを摂ってはいけません。2つの多発性硬化症(MS)モデルを用いた新しい研究により、この物質はMS様神経病理学( neuropathology )的な炎症をもたらし、神経保護作用を有していないことがわかりました。役に立たないどころか悪影響を及ぼすのです。

この試験結果は『The American Journal of Pathology』に掲載されました。

レスベラトロールは天然に存在する(naturally occurring)ポリフェノール化合物であり、赤ワイン用ブドウ( red grapes)の皮に含まれています。これは抗炎症作用や抗酸化性をもつと考えられています。

このことはいくつかの実験的試験によって裏付けられていますが、「そんなに効果ないんじゃないか」と疑問に思っている人もいます。

ルイジアナ州健康化学大学の分子&腫瘍ウイルス学センター所属でマイクロバイオロジーおよび免疫学部の助教授である Ikuo Tsunoda氏は次のように述べています。
レスベラトロールは特定の病状(disease condition)に対しては有害な影響を及ぼすことがあるため、このサプリメント多発性硬化症患者が使用することは避けなければなりません」

マウスにおけるレスベラトロールの効果

研究者はMSマウスの自己免疫およびウイルスモデルに対するレスベラトロール作用を調査しました。
自己免疫モデルに対しては、ミエリン乏突起神経膠細胞糖タンパク(myelin oligodendrocyte glycoprotein )を用いて実験的自己免疫脳脊髄炎( experimental autoimmune encephalomeylitis:EAE)をシミュレートしました。そして、マウスに通常の餌、またはレスベラトロールを含む餌のどちらかを与えました。

12日後にはすべてのマウスが、尻尾や後肢(hind limb)の麻痺などの臨床徴候(clinical sign)を呈し、その症状は3週時まで悪化し続けました。

5週間後、通常の餌を食べているマウスは全快するか、あるいは軽度の麻痺のみを呈していましたが、レスベラトロール入りのほうのマウスでは重度かつ持続性のEAEが生じていました。

マウスの脊髄( spinal cord)を対象とした神経病理学的テストでも、レスベラトロール入りの餌を食べたマウスでは脱髄(demyelination)、髄膜炎(meningitis)、炎症の病理スコアが高くなっていました。レスベラトロールが自己免疫反応を抑えるというエビデンスは得られなかったので、研究者はそれが抗炎症作用をもたないという結論を出しました。

レスベラトロールが抗ウイルス作用を発揮するかどうかを調査した追加実験でも、同様の結果が出ました。つまり「効果なし」ということです。