ロア糸状虫症 Loaiasis

熱帯アフリカに分布するフィラリア症の一種。成虫はヒトの皮下組織に移動性の浮腫calabar swelling、腫瘤を形成する。また成虫および産出された幼虫にクロフィラリア)は眼瞼や眼球結膜に現れ、浮腫や疼痛を起こすことがあるが、失明に至ることはない。病原体はロア糸状虫Loa loaで、別名African eye worm という。成虫は上記のように主に皮下組織に寄生、ミクロフィラリアを産生する。ミクロフィラリアは血流に入り、眼に到達する。主に昼間に末梢血に出現する(昼間定期出現性)。媒介動物はアブhorseflyでC. silaceaなどが重要。熱帯アフリカ(中央~西アフリカ)では感染率が10~20%に達する地域もあり、ザイール、コンゴ、アンゴラガボン中央アフリカなどに分布している。診断は末梢血中に出現するミクロフィラリアを形態学的に検査して行う。特徴的な臨床症状、血清学的方法および末梢血中の好酸球増多も補助手段となり得る。バンクロフト糸状虫など他の人体寄生フィラリアとはミクロフィラリアによって鑑別できる。治療には眼の結膜下に出現した虫体を外科的に摘出するか、ジエチルカルバマジンを投与する。本剤はミクロフィラリアに対して有効とされるが、死滅したミクロフィラリアに原因するアレルギーによる髄膜脳炎がときに見られる。予防には現在有効な対策は確立されていない。流行地では衣服などに注意して媒介動物であるアブの刺咬を防ぐ以外にない。