つつが虫病

 A 方針

 ツツガムシの生態や棲息状況から見て、ツツガムシを絶滅することあるいは吸着を完全に防ぐことはまず不可能である。したがって、万一発病した際の早期診断、早期治療がつつが虫病による不幸を防止する第一条件であるから、医師はもとより行政担当者や住民一般に対するつつが虫病の知識の普及が大切である。

 B 防疫

 1.つつが虫病は届出伝染病であるので、24時間以内に保健所長へ届けること(伝染病予防法第3条の2)。これは、地域の医療体制を整えるうえでも必要である。ただし、ヒトからヒトヘの伝染はないので、隔離とか消毒の必要性はまったくない。

 2.特定の狭い確実な有毒ツツガムシの常在地には立ち入りを禁止する。

 3.やむを得ず有毒地に立ち入った後には必ず入浴し、万一にも付着しているかも知れないツツガムシを洗い落とすO

 殺虫剤の散布やダニ忌避剤の効果は期待できない。田畑、山野などへ立ち入った後または皮膚に刺傷感があった後の発熱時は、医師にその旨を告げて診療を受ける(ただしアカツツガムシ以外では刺傷感に気づきにくい)。今までに有効なワクチン製造には成功していない。またテトラサイクリン系抗菌薬の予防投与も現実的ではない。

 C 流行時対策

 1.地域の住民に対してつつが虫病に対する知識、すなわち日本では全国的に存在していて決して特定地域の風土病ではないこと。その地域に棲息するツツガムシの種類によって毎年一定季節に発生することを周知させる。

 2.適正治療が遅れれば現在でもなお死亡例が出るおそれがあることから、医師に対し早期診断、早期治療を徹底すること。すなわち、白血球数増多のない不明持続的発熱と発疹の際の本病想起が先決で、次いで刺し口の発見および血清学的迅速診断への血清依頼、適正抗菌薬の早期使用などを勧める。

 特に最近の原因不明のベータラクタム系無効の高熱持続後または播種性血管内凝固症候群(DIC)による死亡例の中には本病が含まれている可能性があるので、注意が必要である。

 D 治療方針

 テトラサイクリン系にノサイクリン、ドキシサイクリンなど)、クロラムフェニコール系の薬剤を経口的に初回に大量に、その後は分割量を無熱になるまで(平均30時間)毎日投与する。リヶツチアはリンパ組織内に存在するので、再熱を防ぐためにさらに少なくとも7~10日間は続ける。