リーシュマニア症の疫学的特徴

 1.発生状況 内臓リーシュマニア症は新旧両大陸の熱帯、亜熱帯地方に広く分布している。アジアではインド、中国などに見られる。皮膚リーシュマニア症のうち旧世界型はアフリカ(エチオピア、ケニア)から中近東、地中海沿岸、ロシア、インド辺りに分布している。新世界型はメキシコからブラジルに至る地域にある。粘膜皮膚リーシュマニア症は南米のみ、コロンビア、ベネズエラからブラジル、ペルー、パラグアイにかけて分布している。

 2.感染源 一般にリーシュマニア症の場合は種々な動物が保虫宿主として人体への感染に重要な役目を果たしている。内臓リーシュマニア症の場合はインドのものはヒトだけが宿主となっているが、他のタイプでは多くイヌが保虫宿主となっている。旧世界皮膚りーシュマニア症では多くはイヌ、スナネズミであり、ヒトとの間に伝播が起こる。一方、新世界皮膚リTシュマニア症では齧歯類が主な保虫宿主となっている。中南米の粘膜皮膚リーシュマニア症の場合はやはり齧歯類が保虫宿主となっている。

 3.伝播様式 媒介動物はサシチョウバエ(スナバエsandfly)でPhlebotomus属、 Lutzomyia属のものが大部分を占める。このハエは体長2~3mmの小さなものであるが、吸血性で人体を吸血する際にその体内で増殖した感染形が注入されて感染する。

 4.潜伏期 内臓リーシュマニア症の場合は数週~数か月とやや不定であるが、多くは1~2か月とされる。皮膚リーシュマニア症の場合は旧世界型、新世界型とも2~8週間程度。粘膜皮膚リーシュマニア症では不定。

 5.伝染期間 内臓リーシュマニア症の場合は虫体が流血中に存在する急性期(有熱期)には伝染性がある。皮膚リーシュマニア症、粘膜皮膚リーシュマニア症の場合は、局所病変が活動性で治癒傾向が見られない時期は感染源となる可能性がある。

 6.ヒトの感受性 ヒトは上記のどのリーシュマニア原虫に対しても感受性を有している。ヒト以外の動物の場合は比較的感受|生の広い原虫と狭い原虫があり、保虫宿主として各々伝播に影響している。