GPR30は癌細胞増殖を促進する

制御されていない細胞増殖が癌の顕著な特徴であり[67]、たいていの場合には細胞増殖の無制御と細胞死の抑制が、癌発生の基本的なメカニズムとなる[68]。GPR30の活性化はEGFR-MAPKシグナル伝達経路を通して乳癌と子宮体癌、卵巣癌、および甲状腺癌の細胞増殖を促進することが、数多くのin vtro試験で明らかとなっている。
Filardoらは乳癌細胞株SKBR3を用いて、HB-EGF生成によるEGFR活性化経由でエストロゲンがErk-1および2を活性化するということを示した[28]。さらに別の研究報告でも、エストロゲンまたはOHTによるGPR30シグナル伝達の活性化が、結合組織成長因子(CTGF)の誘導を通してER(-)ヒト乳癌細胞増殖を促進している[47]。植物性エストロゲンとして知られるテクトリジンは、植物由来の天然化合物であり、その化学構造が動物性エストロゲンに似ているが、ERαへの結合能を有していない。しかし、GPR30および下流MAPKシグナル伝達経路の活性化を通して、乳癌細胞株MCF-7の細胞増殖誘導などのエストロゲン作用を発揮する[64]。その上、エストロゲン誘導性のER(-)乳癌細胞増殖を誘導するEGFの生成が、GPR30の活性化によって亢進することが報告されている[34]。この研究ではEGFが、急激なErkリン酸化およびc-fos(癌源遺伝子)発現誘導経由のGPR30タンパク質発現を誘導していた[34]。
子宮体癌に関してはHeら[29]が2つの子宮体癌細胞株KLE(ER-)およびRL95-2(ER+)を用いて、エストロゲンとG-1によるGPR30およびMAPKシグナル伝達経路活性化経由の細胞増殖促進作用を実証している。
卵巣癌細胞株BG-1ではEGFR-MAPKシグナル伝達経路を通して、GPR30がエストロゲンHSVとG-1に対する成長応答に影響を与えたが、他の腫瘍タイプとは違い、この作用はERαの共役発現を必要とした[21]。最も多い殺虫剤汚染物質のうちの1つである「アトラジン」は、ERα関与のGPR30-EGFR経路を通したELISA標的遺伝子発現とErkリン酸化経由で、卵巣癌細胞の増殖作用を促進した[61]。
甲状腺癌細胞株WROではGPR30が、MAPK経路を通したエストロゲンとゲニステイン、およびOHTの細胞増殖作用を左右することが報告された[46]。従って、GPR30活性化は多くの癌細胞タイプの細胞増殖をもたらすという結論に達する。