抗ヒスタミン薬が嫌な思い出を消す

ヒトゲノムプロジェクトは人間の複雑な特徴について多くの発見をもたらしましたが、この情報を用いて新薬を特定するのはなかなか難しい作業です。今回、ヒトの記憶に関連する化合物が明らかになり、そのうちの一つがネガティブな記憶を減少させました。

スイスのバーゼル大学の研究員は、彼らの試験結果が心的外傷後ストレス障害( post-traumatic stress disorder)の治療に役立つと確信しています。試験結果をまとめた論文はジャーナル誌『PNAS』に掲載されました。

米国国立精神保健研究所( National Institute of Mental Health)によれば、米国では約770万人がPTSDにかかっています。

同機関はPTSD症状を3つにグループ分けできるとしています。

1.再体験症状(Re-experiencing symptoms):フラッシュバック、悪夢、恐ろしい考え

2.忌避症状(Avoidance symptoms):体験を思い出させるものから回避、ぼんやりとした感覚、罪の意識、抑うつ、無気力など

3. 過覚醒(Hyperarousal ):怯えやすい、心配性、睡眠障害


研究チームは2つの遺伝子セット(神経刺激性リガンド受容体相互作用、および長期抑圧の遺伝子セット)における20個の潜在的な薬剤標的遺伝子を特定しました。

二重盲検プラセボ対照試験において、研究員は遺伝子産物の一つと相互作用する化合物を確認しました。

興味深いことに、その化合物は人気の抗ヒスタミン剤であり、その単回投与が嫌な思い出の減少をもたらしました。ちなみにこの事例では、嫌悪感をもたらす写真を被験者に見せたとのこと。

さらに、抗ヒスタミン薬はニュートラルまたはポジティブな記憶に対しては影響を及ぼしていませんでした。

今回の新発見は、革新的な遺伝子分析法の急速な進歩によるものと言えるでしょう。