強度変調陽子線治療では栄養補給チューブの使用が半減

 

強度変調陽子線治療法(Intensity Modulated Proton Therapy : IMPT)を受けた口腔咽頭上皮がん(oropharyngeal carcinoma )患者では、強度変調放射線療法を受けた者と比較して、栄養チューブ( feeding tubes)の使用が50%以上減少することが、Texas MD Anderson Proton Therapy Center (テキサスMD陽子線療法センター)大学の研究によって明らかになりました。この結果は、咽喉の背側に腫瘍が発生した患者に対して、陽子線治療が非常に有効である可能性を示しています。

放射腺腫瘍学博士のSteven.J.Frankによれば、IMPTを受けた口腔咽頭上皮がん患者の毒性レベルは、IMRTを受けた場合のものよりもはるかに低いそうです。

最新の陽子線治療の一つであるIMPTは、正確な量のプロトンを頭や首、舌根(base of tongue )、扁桃腺(base of tongue )など隅から隅まで放射します。MDアンダーソンは2011年に初めてOPT患者を治療して以来、新しいタイプの陽子線治療で今までに約150人の頭部および軽侮悪性腫瘍(neck malignancies)に対応してきました。そして、神経認知機能( neurocognitive function)や視力、嚥下(swallowing)、聴力、味覚、言語能力などの生命アウトカム-レベルの維持に成功しています。

IMPTはとくに頭部や頚部に腫瘍をもつ患者に有効であり、腫瘍の層ごとにプロトンを正確にペイントします。そのため、治療チームは放射線の標的エリアを制限し、口腔(oral cavity )や脳幹(brain stem)などをダメージから保護することができます。

MDアンダーソンの研究員は試験の一環としてIMPTのOPC患者25名、IMRTのOPC患者25名の評価を実施しました。IMPT患者では、IMRTで発生した嘔吐や悪心、聴覚障害、粘膜炎( mucositis :消化管の炎症および潰瘍形成)などの重篤な副作用が生じませんでした。さらに、患者は栄養と水分状態を良好に維持し、治療中および後にすぐに回復しました。

HPV関連頭部及び頚部癌が米国の成人の間で最近多く発生しているため、患者の治療コース(極論的には余生)に影響する従来のIMRT関連の副作用を最小限に抑えることが求められています。比較的若い患者を治療する場合には放射線治療が主なツールになるので、新しい技術が本当に有効であるかどうかを常に把握していかなければなりません。

MD Andersonは同試験の結果に基づき、頭部および頚部口腔咽頭癌の治療における『IMPT vs IMRT』のフェーズⅡ/Ⅲ無作為試験を実施しています。MD Andersonは今後5年間のうちに、360名の患者登録を行い、既存の副作用リスクを低下させる陽子線の能力を評価し、癌克服率を原体照射法(conformal radiation therapy)の場合よりも向上させる予定です。今回の発表を聞いた限りではIMPTの圧勝のようですね。今後の進展が楽しみです。