GPR30:乳癌細胞株におけるERの局所発現に関連

GPR30は、1996~1998年に4つの研究所で異なる細胞から同定されたが[24-27]、当時はそのリガンドが明らかでなかったため、Gタンパク質共役受容体(GPCR)スーパーファミリーに対する有意な相同性にちなんで命名された。この受容体は乳癌細胞株におけるERの局所発現に関連していることがわかり[26]、その後2000年にはFilardoらが、2つの乳癌細胞株「MCF-7(ERα+/ERβ+/GPR30+)」とER非発現型の「SKBR3(ERα-/ERβ-/GPR30+)」における細胞外シグナル制御キナーゼ(Erk)1、およびErk-2がエストロゲンによって急激に活性化したことを報告した。エストロゲンがGPR30のリガンドである可能性を示すこの研究結果は[28]、GPR30非発現型の乳癌細胞株「MDA-MB-231(ERα-/ERβ+/GPR30-)」におけるErk-1および2がエストロゲンによって活性化しなかった一方で、細胞へのGPR30移入後にはエストロゲンがErk-1および2を活性化させたという報告によってさらに信頼できるものになった[28]。従って、エストロゲンによるErk-1および2活性化にはGPR30が必要不可欠である。
GPR30はこれまでに、心臓や肝臓、肺、腸、卵巣、脳、乳房、子宮、胎盤、皮下脂肪、内臓脂肪、動脈、血管などの数多くのヒト組織または細胞株で発見されている[20、24-26、29-33]