乳がんの最新の薬物療法

乳癌の最新の薬物治療について紹介します。国内では現在、従来の抗がん剤に加え、トラスツズマブ(製品名ハーセプチン)とラパチニブ(製品名タイケルブ)という分子標的薬による治療が健康保険で認められています。

実はこの2つの抗がん剤は、HER2(ヒト上皮増殖因子受容体2型)という特殊なタンパク質が、癌細胞の遺伝子にたくさんついているタイプの乳癌にだけ効くことがわかっています。そのため、治療前にこのタンパクを調べて、陽性の人にだけ使います。この検査は健康保険で認められているので、今では必ず行われています。

さらに最近では、癌細胞のいわゆる外見だけでなく、中身の性格も検査する、「オンコタイプDX」などの癌細胞の詳しい遺伝子検査も開発されています。日本ではまだ、健康保険は適用されないので検査は高額ですが、手術後のホルモン療法がよく効く乳癌に対してさらに乳癌剤治療の効果を上乗せできるかなどを見極める場合もあります。

分子標的薬について

今までの抗がん剤と違い、細胞の増殖、転移などに関係するいくつかの特異的な遺伝子やタンパクの分子を標的として作用します。癌細胞だけを狙い撃ちするため、副作用が少ないと考えられていましたが、特有の副作用が起こることもわかってきています。

トラスツズマブは進行したがんと手術後の化学療法としても使えます。一方、ラパチニブは2009年に発売され、現在は、転移のある乳癌にカペシタビン(製品名ゼローダ)という抗がん剤と併用されます。

乳癌の自己チェック方法

乳癌がほとんどの癌と違うのは、自己チェックが可能という点です。驚くことに、日本乳癌学会の「全国乳がん患者登録」によると、自己発見が乳癌発見のきっかけの67%にも上っていました。それほど自己チェックは重要と言えます。

しこりなんて、乳癌の専門家でもない私たちには見つけられなのでは? と疑問に思う人も少なくないでしょう。しかし、ある程度、触り続けていると、いつもと違う変化に気づくようになるそうです。

月経のある女性は月経後3、4日過ぎて乳房が張っていないときに、また閉経を過ぎた女性はいつでもいいので毎月、日を決めて自己チェックしたいものです。なお、入浴中、石鹸を付けて滑りやすくなった状態で触ると、乳癌の変化がよりわかりやすくなります。また、自己チェックは触るだけでなく、乳房のくぼみや乳首のただれなど、目で見るチェックも忘れないようにしましょう。