妊娠中の精神的苦痛や大気汚染は胎児の発達に悪影響


妊娠期における母親の精神的苦痛(psychological distress )と大気汚染への曝露が、子供の行動発達に影響を及ぼすことがわかりました。

これを示した論文は『Pediatrics』に載っており、ストレス環境への適応能力に影響を及ぼす心理的苦痛を示す『母親の士気喪失(demoralization)』が、不安や意気消沈、注意力低下、危険な行動などの多くの障害に関連していることを報告しています。士気喪失の影響は、大気中の多環芳香族炭化水素( polycyclic aromatic hydrocarbon ;PAH)への出産前曝露が高い子供でもっとも大きくなります。

この試験では、胎児発達期における肉体的および精神的ストレス因子が各曝露の影響を強めることがわかりました。注意力低下や不安は仲間関係や学業能力、将来の健康状態に影響を及ぼすことになります。

この論文は母親が妊娠中に吸い込む多環芳香族炭化水素と燃焼関連の汚染物質、および幼年時代における母親の行動障害との間にみられる関係性に着目した初のものです。

PAHは自動車や石炭火力発電所(coal-fired power plant)、住宅暖房(residential heating )、たばこの煙などの燃焼源から発生した大気汚染物質です。試験が実施されたポーランドのKrakowでは石炭燃焼がもっとも大きい大気汚染源です。

出生前の大気汚染と幼少期における行動障害や認識障害の関連性は、ニューヨークシティのCenter's Mothers & Newborns 試験で確認されています。この新しい問題を取り上げた論文は、行動障害に対する母親の精神的苦痛と大気汚染の影響を調査した結果に基づいています。

社会的環境と物質的環境の関係を理解すれば、健康上の格差を説明できるようになり、その結果として子供の健康と発育を守るための方法をつくれるようになります。今回の試験結果により、都市部における大気汚染曝露を減らすために政治的な介入を実施することや、妊娠初期の女性を診断して精神的サポートを提供することの重要性が明らかになりました。