膿疱症：疱疹状膿痂疹、膿癇性細菌疹

無菌的膿疱(aseptic pustule)を主体とする疾患。膿疱発生機序にホルモン〔副腎皮質ホルモン・プロゲステロン〕、病巣感染、免疫複合体、抗角層抗体、好中球遊走因子などが考えられる。

1。疱疹状膿痂疹impetigo herpetiformis 〔Hebra 1872、 Kaposi 1887〕

　〔症状〕妊娠初期に、膿疱を環状に辺縁に有する紅斑が多発し連圏状～蛇行状に並ぶ。鼡径・緕囲・会陰・腋窩など間接部位に初発し、全身に及ぶ。痰痒あり、あとに色素沈着を残す。妊娠ごとに発する。発熱・悪寒・嘔吐・下痢を伴うことも少なくない。分娩とともに治癒するが、まれにけいれん一子癇を伴って死亡する。男子例や非妊娠女子例もあり、低Ｃａ血症・副甲状腺機能低下も関与する。膿癇性乾癬との異同が問題となっている〔caり。252〕。わが国で約50例。

　［組織像］角層下Kogoj海綿状膿疱で、好中球のほか好酸球・リンパ球をも混ずる。

　〔鑑別診断〕①膿疱性乾癬、②妊娠性疱疹、③角層下膿疱症。

　〔治療〕ステロイド剤、免疫抑制剤、人工妊娠中絶、 PUVA。

2。膿癇性細菌疹pustular bacterid ［Andrews］

　〔症状〕手掌足底に小水疱が多発、直ちに膿疱化し、その周りに紅暈をめぐらし、やがて融合して局面を形成、紅斑落屑性局面上に多数の膿疱を有する皮疹となる。境界は明瞭、緻痒の有無は種々、慢性に経過し、ときどき増悪する。膿疱が全身に撒布状’に来ることがある。ときには肘頭・膝蓋に角化性紅斑、頭部に粃糠様落屑を伴う。また胸肋鎖骨間骨化症〔inter-sterno-costo-clavicular ossification :ＩＳＣＣＯ〕を10％ほどに合併。成年に多い。

　〔組織所見〕表皮内〔角層下〕単房性膿疱で好中球と変性した表皮細胞とを含む。真皮の反応性細胞浸潤は軽度。

　〔病因〕病巣感染アレルギー説、乾癬説、金属アレルギー説〔歯科金属〕、内分泌障害〔女性・更年期発症・月経前増悪〕など種々。

　〔鑑別診断〕①足白癬：水疱・落屑、菌証明、②汗疱：小水疱、薄い環状落屑、③膿疱性乾癬：他に乾癬病巣あり、大きなマンロー微小膿瘍を有する乾癬の組織像。手掌足底に限局せず全身に汎発、④稽留性肢端皮膚炎：指尖から爪囲炎の形で始まり、外傷の先行が多い。偏側性、中枢に向かって進行し全身皮膚を侵すことあり。

　〔治療〕①ステロイド軟膏、②病巣感染の処置、特に扁摘、③消炎剤・抗ビ剤、④抗生物質・サルファ剤・ＤＤＳ・コルヒチン、⑤エトレチネート、⑥免疫抑制剤、⑦PUVA、⑧歯科金属除去。

　　　〔付〕急性汎発性膿疱性細菌疹acute generalized pustular bacterid : 中年男女で、急性上気道感染〔溶連菌〕に引続き、手足背・下腿・体幹に紅暈を伴う膿疱の集簇がみられる。軽度発熱・関節痛・結節性紅斑様皮疹を伴うことあり、 ASLO上昇、白血球増多、血沈促進。膿疱は無菌性。表皮内に好中球性膿疱、ときにアレルギー性血管炎像、小血管にlgM･Ｃの沈着。一過性で再発はない。