固定薬疹、播種状紅斑丘疹型、紅皮症型、皮膚粘膜症候群型、ライエル型

1。 固定薬疹fixed drug eruption、 fixes Arzneimittelexanthem

 皮膚粘膜移行部〔口囲・口唇・外陰部〕、四肢〔手足、関節部〕に好発。境界明瞭な貨幣~手掌大の円形の紅斑で、中央紅紫色で、ときに水疱・びらんとなる。痰痒・疼痛がある。原因薬内服後、数分から数時間のうちに発症し、2~5週の経過で色素沈着を残して治癒するが、再発毎に色素沈着は増強する。サルファ剤・バルビタール剤・ピラゾロン剤・抗生物質〔テトラサイクリン・ペニシリン〕・ヒダントイン・グルセオフルビンによることが多い。近時減少したが〔全薬疹の10%以下〕、原因となりやすい薬剤〔サルファ剤・バルビタール剤・ピラゾロン剤など〕の使用頻度の減少によると思われる。

2。播種状紅斑丘疹型〔麻疹猩紅熱様発疹〕maculopapular type drug eruption

 薬剤摂取後数日で大小の紅斑、半米粒大までの丘疹が全身に左右対側性に発生し、痰痒と灼熱感とを伴う。粘膜疹を伴うこともある。発熱・倦怠感・関節痛・リンパ節腫脹・好酸球増多、造血器障害のような全身症状が種々の程度にみられる。薬疹の約1/3が本型で近年増加傾向にあり、遅延型アレルギー機序と考えられる。麻疹様、風疹様、猩紅熱様、ジベル様ともいわれる。

3。紅皮症型〔剥脱性皮膚炎型〕erythroderma-type drug eruption

 全身皮膚が潮紅・浸潤・落屑を生じ寤痒が強い。前者と同じような全身症状を伴い、また肝腎障害も発して、しばしば予後が悪い。前者から移行するもの、一部の湿疹型病変から汎発化するものなどがある。

4。皮膚粘膜症候群型〔多型紅斑重症型〕multiforme-type drug l eruption

 薬剤摂取数日~数週で、四肢末梢、とくにその伸側に多型滲出性紅斑が多発し、かつ粘膜症状が強い。高熱・倦怠感・関節痛・結膜炎・外陰部肛囲びらん・気道消化管症状を伴ういわゆるStevens-Johnson症候群はこの重症の極で、ときに死亡する。

5。ライエル型 toxic epidermal necrolysis 〔TEN〕

 原因薬摂取後、高熱・全身皮膚灼熱感とともに鮮紅色の有痛性びまん性紅斑が生じ、2~3日中に大水疱が多発し、ぺろりと皮がむけたような広範なびらん面を生じ、あたかも広範囲熱傷のようである。二コルスキー現象陽性。口腔・外陰・消化管粘膜も侵される。ときに予後不良〔死亡率20~30%〕。治癒後色素沈着・稗粒腫・脱毛・爪甲変形・結膜癒着・角膜潰瘍などを残すことがある。ブタゾリジン・サルファ剤・バルビツール剤などによる。一種のGVHRと考えられる。