抗がん剤の副作用:泌尿器障害、口内炎、脱毛

 泌尿器障害

 腎障害には,抗癌剤による直接の腎毒性と,高尿酸血症を原因とする尿酸結石による間接的な場合とがある。また,合併症の高カルシウム血症に起因するカルシウム結石による場合もあり,鑑別が必要となる。

 CDDPは近位尿細管の細胞を傷害し,更にその過程で細胞外にlysosome酵素が流出して周囲の壊死が促進され,腎障害を生じる。その軽減には,CDDPの排泄促進のため輸液と利尿剤(D-マンニトール,フロセミドなど)を併用し,3,000m//日以上の尿量を確保するほか,いくつかの方法が知られている20・21)。 CDDPの腎毒性軽減のため開発された製剤にカルボプラチンがある。

 他にニトロソウレア系, MMC (遅延型:治療中止後6ヵ月以上経て発症), MTX50mg/kg以上の大量投与時, CPA, IFX (出血性膀胱炎)等で泌尿器障害が見られる。

 

 口内炎

 MTX, 5-FU, ADMなどにより発現する。痛みのため食物摂取が困難になる一方,口腔粘膜の防御機能が損なわれ,感染が生じやすくなる。アロプリノール含嗽法,氷片を口に含み局所血流低下により口内炎を予防するoral cryotherapy等が試みられている。

 

 脱毛

 ADM, DNR, CPA, IFX, VP - 16等で高度に発現する。脱毛はDLFにはならないが,患者のQOLのため,次のような予防策がとられる:(1)頭皮締めつけ法…薬剤投与直前から終了後5~20分まで頭皮を圧迫する。(2)頭皮冷却法…薬剤投与時にice turban などで頭皮を18~28℃に冷却し,頭皮への血流減少と毛嚢の代謝低下により抗癌剤の細胞内取り込みを抑制する。特にADMの細胞内取り込みはエネルギー依存性のため効果があるとされる。(3)トコフェロール軟膏。ただし顕著な効果は期待できないようである。(4)育毛プロテインクリームは,アルブミングロブリン,メチオエン,酢酸トコフェp-ルを主成分とし,頭皮冷却法との併用で有効との報告がある。

(1)及び(2)の方法は,半減期の長い制癌剤や持続静注の場合には有効でない。

 

 肝障害

 抗癌剤による肝障害が疑われる時には,直接・間接的な肝臓毒か,薬物アレルギーかをリンパ球培養試験によって鑑別し,陽性(薬物アレルギー)であれば投与を中止する。陰性であれば,投与量を変更する。 MTX長期連用で肝の繊維化や肝硬変が,またL-ASPでびまん性の脂肪変性が認められる。投薬中止後も回復しない例には強カネオミノファーゲソC,ウルソデスオキシコール酸,ステロイドの短期投与等を行う。

 その他

 肺毒性は, BLM, BUS, MTXで各々5%前後の患者に生じると言われる。

 心毒性は, ADM, DNR, MIT, 5 FU等で見られることがある。特に心疾患の既往のある患者では,胸痛,低血圧,不整脈,心電図変化などの徴候に注意が必要である。ADMの心毒性軽減を図った誘導体にピラルビシン,エピルビシンがある。

 肺毒性及び心毒性発現には, free radical による過酸化反応が関与すると言われ,トコフェロールやユビデカレノンなどfree radical scavengerの併用が試みられている。