有棘細胞癌の薬物療法:pepleomycin (PEP)、P-M療法

 1・ pepleomycin (PEP)

 抗癌性抗生物質であり、 bleomycin誘導体である。既にメラノーマのPAVの項で記載したが、有棘細胞癌に対しては第1選択の薬剤である。

 筋注、静注、動注などに用いられる。実際には筋注で投与することが多く、その投与内容もいくつかの種類がある。静注は余り用いられないがPEP 5 ~lOmg (力価)を生食、またはブドウ糖など静注用注射液5~10m/に溶解し、緩徐に静注する。一般に週2回投与するが、時に1~3と分けることもある。最高投与量は150mgである。次に、末端部位の腫瘍に対し、持続動注もしばしば施行される。原発巣に対する奏効率は70%前後である。進行期には奏効率は低下するようである。副作用は、最も要注意は肺繊維症である。副作用は静注が最も高く、筋注や動注は少ない。もし、肺繊維症が発生すれば直ちに投与を中止すると同時にステロイドなどの投与を行うべきである。また、肺炎を合併することもあるので十分なチェックが必要である。case by case であるが、最高総投与量250・とされている。肺繊維症ならびに予の合併症の発生の予防の為である。

 2. P-M療法

 原発巣のみの場合と進行期にも適用される。短期間で1クールが終了するので便利である。表3に投与法を記載した。 mitomycin Cも抗癌性抗生物質に属し、商品名Mitomycin同意語あるいは略語としてMMC、 MT、Ametycin、 Mutamycinなどがある。副作用は造血機能障害であるが、点滴静注において漏出すると局所がしばしば壊死に陥ることがある。 mitomycin Cの投与はブドウ糖やソリタT3などで点滴にて行う。P-M療法は原発巣のみならず、リンパ節転移も有効と言われる。

 3. CAV療法

 進行期のために考えられたcombinationである。 PEP やP-M療法に抵抗性のある場合に適用されている。cisplatin、 adriamycin、 vindesineの併用である。 cisplatin やvindesineについては既に記載したので省略する。 adriamycin は抗癌性抗生物質で多くの腫瘍に使用されている抗腫瘍剤で商品名はadriacin、略語としてDXR、 ADM、 ADRなどがある。最近、類似薬としてfarmorubicinやPinorubinがある。 CAV の投与法についてはノラノーマのDAVに類似しているが、 cisplatinは80~lOOmg/㎡でDAVと同じく2日目に投与、3日目にはadriamycin20~40唏及びvindesine 3 ~5㎎を側管注する。4週毎に反復する。但し、このCAV療法はわれわれが試みている治療法で、皮膚科領域で定まったものではないが、最近、各施設から問い合わせがあり、全国的に広まってきている。本療法はリンパ節転移や肺転移に奏効例を見ている。

 副作用はcisplatinの悪心・癲吐などの消化器症状、腎機能障害、造血器機能障害、 vindesineの造血機能障害などがあり、すでにフラノーマの項で記載したが、 adriamycinは悪心・嘔吐、白血球減少、脱毛、発熱、また500mg/㎡を越えると心筋障害が起こる恐れがある。

 4.その他

 最近、新しい薬物としてCPT-Ⅱが開発され有棘細胞癌に優れた効果が報告されている。

 本薬剤は、中国原産の「喜樹」に含有されるCamptothecin (CPT)の新規な誘導体である。肺転移、リンパ節転移に奏効していることより、今後の展開が期待される。

 皮膚癌、特に悪性黒色腫(メラノーマ)と有棘細胞癌について適用される、薬剤と病期別治療指針ならびに副作用について記載した。両腫瘍とも進行期におけるより強力な薬剤の出現、あるいはcombinationの工夫が必要と思われる。

 

 

              有棘細胞癌の化学療法
1) PEP

 a) PEP2.5明朝、夕2回筋肉内注射.連日10~15回.

 b) PEP 5 mg 1日1回、筋肉内注射.連日10~15回.

 c) PEPlOmg隔日または週2回、筋肉内注射、10回投与.

2) P-M

  PEP 5 mg (筋肉内注射) mitomycin C (10明点滴静注)

  (上記を隔週ごとに3~4クール施行)

3) PEP動注

  主に四肢末端に腫瘍がある場合に適用される.連日あるいは隔日にPEP2.5~

  5~10㎎を動脈内に注入する.総投与量50~lOOmg

                (註:DEPはpeplomycin、投与量は成人body)