悪性黒色腫(メラノーマ)の薬物療法:DAV、CAV、CDV

1. DAV療法

 dacarbazineはアルキル化剤のその他に属し、その化学名は5- (3、 3-dimethyl l triazeno卜imidazole-4-carboxamideであり、略語はDTIC、DICで商品名はDacarbazinである。 ACNU もアルキル化剤に属し、3-(4-a mino-2-methy 1-5-py ri midy 1 methyl) -1- (2-chloro-ethyl) -1-nitrosourea hydrochloride またはnimustine hydrochloride で商品名はNidranである。

 vincristineは植物由来抗癌剤であり、同意語としてLeurocristine sulfateといわれ、略語はVCR、商品名はOncobinまたはKyocristineである。

 dacarbazineは100~200mg/㎡(bodyでは100~250mg)を連日5日間、5%ブドウ糖250~500m/あるいはソリタT3の200~500m/の点滴中に側管注する。 ACNU は原則として100㎎/bodyを第1日目に側管注する。2クール目から血小板数の回復の程度により50mgに減量することがある。

 vincristineは1 mg/bodyを第1日目に側管注する。 ACNU もvincristineも一回投与のみである。以上で1クールとするが、本DAV療法は病期IIやⅢにおいては再発・転移の予防を目的として適用されるが、実際に予後の改善に役に立っている。表1に各病期における化学療法(主にDAV)の有無と予後(生存率)について纏めてみた。明らかに病期1やⅢにおいては化学療法の併用が予後の改善に役立っていると思われる。

 dacarbazineの副作用は投与後、間もなく発生する消化器症状で特に悪心・嘔吐は強烈なものがある。 domperidone (ナウゼリン)、 diazepam(セルシン、ホリソン)、 metoclopramide (プリソペラソ)などが用いられていたが、最近、 Granisetron hydrochloride (カイトリル)の登場により悪心・嘔吐はほとんど解消された。一般的には40μg/kgを1日1回点滴静注で十分である。また、 dacarbazineには投与後、3~4週後に白血球減少などの造血機能障害や肝機能障害などがある。次にACNUの副作用の主なるものは遅延型骨髄毒性(delayed m yelosuppression)で投与4週後くらいから発生する血小板減少である。vincristineの副作用は造血機能障害が主であるが強いものではなく、また、1週前後で消失する。むしろ、反復投与における麻痺性イレウス、神経、筋症状などが要注意である。以上よりDAV療法は原則として4週間隔て行うが副作用の程度により投与間隔を調節する。投与クール数は既述の通り病期IIでは3クール以上、Ⅲでは5クール以上としている。

 2. PAV療法

 一般的にDAVと同じように適用される。dacarbazineの代わりにpepleomycin (PEP、 pepleo) 5 mgを連日6~10日筋注を行う。 ACNU やvincristineはDAVの場合と同様である。副作用はAVは同様であるが、 pepleomycinは発熱、頭痛、食欲不振、蕁麻疹、脱毛、爪甲変形、色素沈着などがあるが、要注意は肺繊維症である。肺機能、血液ガス、胸部X線のチェックが必要である。投与間隔はAVの副作用を検討して3~4週毎に反復する。投与クールはDAVと同様である。

 3. CDV療法

 病期Ⅳで臓器転移が発生した場合、 DAYやPAVの既往のある症例では感受性が低下する。かかる場合、 CDVが適用される。 cisplatin、 dacarbazine、 vindesineの併用である。 cisplatin はCis-Dichlorodiammineplatinum で、略語は CDDP、商品名はBriplatin、 Randaである。

 投与方法はcisplatinの腎機能障害を予防するために、われわれは第1日目に生理食塩液(生食)500m/を3本、2日目に生食6本、 mannitol 200ml、 cisplatin80~100㎎/㎡を投与するが、利尿剤の投与も必要である。3日目には、 dacarbazinelOO~200cm/㎡、及びvindesine 2 mg/㎡、さらに生食500mlを3本投与する。 4~7日目には生食を加えながらdacarbazineを投与するが、本薬剤もvindesineも側管注で投与する。利尿剤を尿量により適宜加え、また、8日目以降も尿量を測定しながら生食の点滴量を調節し中止する。 CDV はメラノーマの進行期に18例投与し5例に有効を見ている(28%の奏効率)。効果を見た転移部位は粘膜、リンパ、脳である。肺や肝転移には有効例を見ていない。

 cisplatinの副作用は腎機能障害の他に悪心・嘔吐が著明に出現するが、カイトリルの投与でほとんど消失する。その他、造血機能障害も認められるが、十分チェックして4~5週毎に反復する。 vindesine の副作用はvincristineとほぼ同様である。

 4.その他

 メラノーマには皮膚転移に対して、インターフェロン。ペーター(IFN-β、天然型、商品名フェロン)が腫瘍内投与として利用されている气奏効率は50%前後であるが、転移腫瘤の径が1cm以下に良く奏効する。その他、イッターロイキッー2を利用した養子免疫療法も化学療法と併用される。

 以上、タラノーマの薬物療法の代表的なものについて記載した。そのCO-mbinationとして、 DAVにpepleomycinを併用してDAVP療法もあるがこれらはcase by case で施行する。