レプトスピラ病

 A 方針

 1.病原レプトスピラ保有動物の対策。

 2.感染経路の遮断。

 3.感染の危険性が高いヒトヘのワクチン接種。

 B 防疫

 1.感染源対策 ネズミの駆除や野犬の取り締まり、衛生環境の改善などが重要である。

 また、家畜については、飼育、移動、輸入の際、感染の有無を検査して動物間でのレプトスピラの蔓延、海外から異なった血清型のレプトスピラの侵入を防ぐことが大叨である。レプトスピラ陽性の動物には、ストレプトマイシンによる除菌が有効である。

 2.感受性者対策 レプトスピラ病は職業との関連が深いので、感染機会が多い職業の者にはワクチンの接種が最も確実な予防法である。レプトスピラの流行地での農業、鉱業、土木業などの従事者、飲食店の料理人などは接種が望ましい。わが国の予防接種法では任意接種とされているが、ワイル病・秋季レプトスピラ病混合ワクチンが用いられており、極めて有効である。

 またレプトスピラ病の流行地では、水田、川、池、下水道などに入るときには、長靴や手袋の着用が必要である。けがをして感染の可能性が考えられたり、また、そのような人が発熱し、レプトスピラ病が疑われる場合には、直ちにストレプトマイシン1gを1~2回筋注することによって、発症の予防あるいは経過を頓挫させることができる。

 C 流行時対策

 感染源を調査してその原因の除去に努める。そのためには汚染地域を確定し、汚染の原因である保菌動物を調査し、その駆除、作業方法の改善、環境改善、衛生教育など、地域の特殊性を考慮して対策を講じる。流行しているレプトスピラの血清型に対応するワクチン接種をできるだけ早く実施する。かつてワイル病が多発した炭鉱ではワクチン接種は最も確実な予防法として必須のものであった。また沖縄県のserovar pyrogenesの流行地区でも、それに対応するワクチン接種が極めて有効であった。

 D 国際的対策

 国際的には、ヒトの問題と家畜の問題とに大別される。

 病原レプトスピラは世界中で約220に及ぶ異なった血清型がある。特に熱帯地方の水田、川、池、湿地帯などは感染の危険性が極めて高いので、予防措置を講ずる注意が大切である。

 E 治療方針

 重症型レプトスピラ病の代表であるワイル病では、早期に適切な治療を行わない場合の致命率は20~30%にも及ぶ。

 1.抗菌薬療法 ストレプトマイシンが最も有効で、ゲンタマイシン、トブラマイシンがこれに次ぐ。これらの薬剤はレプトスピラに対して滅殺作用が強く、特に早期使用によって著効を示す。通常、ストレプトマイシンは1日1~2gずつ2~4日間投与すると、再発することなく治癒させ得る。そのほかのアミノ配糖体、テトラサイクリン系、マクロライド系、ペニシリン系、セフェム系薬剤も有効であるが、滅殺作用が弱く、主として発育阻止作用を示すにとどまるため、臨床効果は劣る。

 抗菌薬療法の確実な効果は第4病日までで、遅くとも第5病日までに開始することが望ましい。第2病日までに的確な治療を始めると速やかな回復を期待し得る。

 2.そのほかの重要な治療 重症型レプトスピラ病では第4病日から第10病日ころまでが最も危険である。第4病日ころからの尿量の減少は脱水、血圧低下、腎機能障害による。脱水と血圧低下に対しては、適正量の輸液と強心・利尿剤の使用によって尿量や血圧の回復を図る。

 尿素窒素が100mg/dl以上を示す場合は重症であり、 200mg/dlに達したときは血液透析または腹膜透析をなるべく早く開始し、症状が改善されるまで繰り返す。