レプトスピラ病の疫学的特徴

 1)病原レプトスピラの証明 暗視野顕微鏡による検出法、モルモットなどを用いる動物接種法、コルトフ培地などを用いる培養法がある。材料は、患者では第1病週の血液、第2病週以後の尿、剖検材料では腎。保菌動物では尿または腎を用いる。  2)血清反応 顕微鏡的凝集反応が標準法として広く用いられている。そのほかのスクリーニングテストとして、螢光抗体法、酵素抗体法、マイクロカプセル法などがある。  1.発生状況 わが国のレプトスピラ病患者の発生は、本病が届出の対象となっていないため正確には把握されていない。厚生省の人口動態統計によると、全国の年次別レプトスピラ病死亡者は、昭和20~30年代には200~300人であったが、昭和50年以降は50人以下となっている。その主な原因は、ワクチンの普及、血清療法や抗菌剤療法を中心とする治療の進歩とともに、衛生環境の整備、水田の改良、農業の機械化、除草剤の開発などによって、感染機会の減少が予防に役立っている。しかし、病原レプトスピラは、ネズミ、イヌ、家畜などに保有されているため、絶滅することは困難である。  また、本病は職業との関連が深い。すなわち、農業(特に水田)、鉱業、飲食業などに多く、現在、大都会でも料理屋の板前、魚市場の従業員などの罹患は跡を絶たない。そのほかの職業では、下水処理、土木・建築工事、牧畜、食肉屠場、食品加工場、生鮮食料品店、台所など、ネズミが出没し、水を扱う所で働く人に多い。  患者の発生時期については、ワイル病とイヌ型レプトスピラ病とは1年を通して発生しているが、特に9月を頂点として夏から秋にかけて多い。秋季レプトスピラ病も8~10月に多いが、地域によっては6、7月に比較的多い。  わが国の発生状況とは異なり、中国や東南アジアなどでは最近多発しており、わが国と異なる血清型のレプトスピラによる流行も見られている。  2.感染源 病原レプトスピラは、ネズミ、イヌ、家畜などの尿細管に保有されているため、それらの尿に汚染された水や泥土、ときには汚染された飲食物が感染源となる。  3.伝播様式 主として汚染された水や泥土に接触して経皮感染する。ときには汚染された飲食物による経口感染もあるo  4.潜伏期 3~14日、通常5~7日。  5.伝染期間 病原レプトスピラは第2病週以後尿に排泄されるため、親子や夫婦間の感染例がある。しかし、ストレプトマイシンの使用によって尿中のレプトスピラの撲滅は容易になったo  6.ヒトの感受性 病原性レプトスピラのうち、ワイル病病原体の病原性が最も強く、適切な治療が行われない場合の致命率は20~30%前後に及ぶが、加齢とともに致命率は上昇し、特に50歳以上では高くなる。