梅毒の予防対策

A 方針

 性病予防法により規制されている。

 1.衛生教育 学校教育、社会教育を通して性病予防を含む性教育が基本的に重要である。性病の症状、子孫への影響、伝播のしかた、治療の方法、コンドームの用い方や洗浄など。個人予防の方法について教育する。罹病した場合は、早く受診し完全に治療するよう指導する。ただしコンドームによる予防は梅毒の場合は淋病の場合ほど効果は期待できない。ホモグループもリスク集団となり得るので感染防止の教育を徹底する。

 2.社会対策 職業的売春や性的乱交を必要としない社会をつくる。挑発的な社会環境を少なくする方向に社会経済的諸条件を改善する。

 3.治療施設の整備 都道府県または市町村は、性病の診療を行うために、病院または診療所をつくるかほかの医療機関で代用することができる(法第16条)。公費医療の摘要を拡充する。

 4.結婚と分娩のために、結婚前には必ず性病に関する健康診断を受け、血清反応検査を行って、互いに診断書を交換するように指導する(法第8条)。妊婦は、早期に梅毒の血清反応検査を受けなければならない(法第9条)。

 5.献血、預血などの際には、 J(|L清反応検査を必ず行う。

 B 防疫

 1.届出 医師が梅毒患者を診断したときは、1か月以内に患者の居住場所を所轄する保健所長を経て、都道府県知事あて患者の年齢・性・職業・病名・感染源の職業を届け出る義務がある(法第6条)。また、医師は患者が医師の治療、予防の指示に従わないとき、また他医受診の証明書を出さないで勝手に治療を中断した場合、あるいは患者の感染源が濃厚感染源と見られる場合にはそれぞれの居住地の管轄保健所長を経て、都道府県知事に、患者もしくは濃厚な感染源である者の氏名、年齢、性、職業および居住地、患者の病名、診断年月日を速やかに届け出る義務がある(法第7条)。

 2.健康診断 婚姻、妊娠の際の性病の有無に関する健康診断には、梅毒の血清反応検査の受検が義務づけられている(法第8、9条)oまた、都道府県知事は売春常習容疑者など濃厚感染源と疑える者で医療を受けていない者に対し、健康診断命令を出すことができる(法第10、 11条)。

 3.治療、入院または入所命令 都道府県知事は、必要と認めるときは、治療を受けていない者に、治療を命令することができ、特に必要があると認めるときは、入院、入所命令を出すことができる。知事の命令による治療費には、経済的な理由による減免規定かある(法第15条)。

 4.消毒 適切な治療を受けている患者には不要。開放性病変からの分泌物およびそれに汚染された衣類などの物品の処理に注意を払う。

 5.行動制限 不要。

 6.接触者および感染源の調査 患者に面接して聞きただすこと、および接触者の追求による感染拡大の阻止が性病防疫の基本的事項である。面接者には面接技術の訓練が必要である。病勢の時期が接触者をたどる基準となる。すなわち、第1期梅毒では、3か月前にさかのぽって、その間のすべての性的接触者、第2期梅毒では、6か月前にさかのぼる同上接触者、早期潜伏梅毒で第1期、第2期の病変の時期が不明のときは、以前1年間の同上接触者、晩期梅毒では配偶者や感染している母の児、先天梅毒では近親の家族全員。確認された接触者は、発症前であってもなるべく化学療法を行うのがよいとされる。治療中断のおそれのある患者には、診断当日に大量のペニシリン投与を行う。

 7.特異療法 一般に、早期に長期持続性ペニシリンの大量投与が行われる。すなわち、早期梅毒および感染後1年以内の潜伏梅毒に対しては、総量480万単位のPAM(2%アルミニウム・モノステアレートを加えた油性プロカインペニシリン)、同じく240万単位のベンザシンペニシリンG、同じく480万単位の水溶性プロカインペニシリンGのいずれも筋注。ペニシリン過敏症の患者には、テトラサイクリンあるいはエリスロマイシンが用いられる。このような患者には経過観察を延長し、血清反応の結果の追跡チェックを忘れてはならない。 1年以上経過する梅毒には、ベンザシンペニシリンGを総量で720万単位または水溶性プロカインペニシリンGを総量で900万単位を筋注する。

 日本では経ロペニシリン剤の投与が主に行われている。

 C 流行時対策

 AおよびBに挙げた対策を強化する。

 D 国際的対策

 性病防疫情報の平時交換ならびに接触者調査の依頼などを国際的にも行うことをWHOは勧告している。