2015-01-22から1日間の記事一覧

骨髄腫の臨床像

臨床像 1.年齢 高齢者,特に60~70歳で発症することが多い。 2.初発症状 骨痛,特に腰痛,背部痛,胸部痛を初発症状とするものが多い。骨折を機に本症が見つかることもある。最近では,健康診断で血沈の亢進,蛋白尿,貧血,あるいはM蛋白血症が見い出され…

副腎癌: Mitotane以外の抗ホルモン剤、抗腫瘍剤での治療

Mitotane以外の薬剤のうち抗ホルモン剤としてMethyrapon、 Amino-glutethimide、 Trilostane、 Ketoconazoleなどが副腎皮質癌の治療に用いられている。これらの薬剤はステロイド生合成系酵素の活性を阻害するもので、過剰なステロイドによる臨床症状を軽減さ…

進行精巣腫瘍の集学的治療

精巣原発の胚細胞腫瘍は乳幼児および青壮年男子に好発する悪性腫瘍で、以前は予後の悪い腫瘍であったが、現在は進行例でも化学療法がよく効く救命可能な疾患となった。 初発症状は無痛性の精巣腫大であるが、ときに有痛性のこともある。 組織型はセミノーマ…

乳癌の化学療法

乳癌に対する抗癌剤の投与は欧米において始められ、その有効性が認められたのはCyclophosphamide (EX)であろう。本剤は今もなお有用な薬剤であり、わが国では主として経口剤が用いられている。EXはそれ自体閉経前患者で卵巣機能抑制作用(medical oophorect…

絨毛癌発生のリスク

経過非順調型のものは、絨毛癌続発のハイリスク状態である。 絨毛癌は正常の分娩、流・早産などからも続発するが、その約6割は胞状奇胎に続発する。 一方、胞状奇胎を掻爬した後、化学療法など一切の治療をしないままで 胎(非順調型の経過をたどるもの)あ…

宿主の感受性:活動免疫、受動免疫、先天抵抗力

病原体が宿主の体内に侵入しても、すべての個体に感染を起こすとは限らない。個体によって感受性に差があるからであるが、感受性のない状態を抵抗力resistanceがあるという。つまり、抵抗力とは、病原体の侵入ないしは増殖あるいはその有毒産物による障害を…

感染経路:直接伝播、関節伝播

感染経路route of infection とは、病原体が感受性のある人間宿主に伝播される経路をいう。病原体の伝播様式mode of transmission というのも同じ意味で、次のように区分される。 (1)直接伝播direct transmission 病原体が、ヒトや動物に感染を起こすため…

病原体の認定:コッホの条件

微生物をある伝染病の病原体と認定するためには、原則的にRobert Kochが挙げた次のコッホの条件Koch's postulatesを満足させる必要があるにの条件は、もともとJacob Henleが1840年に原則を設定しており、 Kochが1877年に改案、さらに1882年に下記のように改…

伝染病の発生条件

伝染病は時間的(time)、場所的(place)にいろいろな人的特性(person)をもって発生する。その発生状況によって次のように区分する。 散発発生sporadic―時間的にも、場所的にも少数の患者が散発的に発生する場合をいう。散発流行とも呼ばれる。 流行epidemic一…

ロア糸状虫症 Loaiasis

熱帯アフリカに分布するフィラリア症の一種。成虫はヒトの皮下組織に移動性の浮腫calabar swelling、腫瘤を形成する。また成虫および産出された幼虫にクロフィラリア)は眼瞼や眼球結膜に現れ、浮腫や疼痛を起こすことがあるが、失明に至ることはない。病原体…

レプトスピラ病

A 方針 1.病原レプトスピラ保有動物の対策。 2.感染経路の遮断。 3.感染の危険性が高いヒトヘのワクチン接種。 B 防疫 1.感染源対策 ネズミの駆除や野犬の取り締まり、衛生環境の改善などが重要である。 また、家畜については、飼育、移動、輸入の際…

レジオネラ症

1.発生状況 世界中で見られる。集団発生と散発例が知られている。院外(市中)肺炎の頻度としては、イギリス13.0%、フランス10.5%、ソ連9.9%、デンマーク2.1%、米国1.0%の報告があり、院内肺炎としては、米国3.2~3.8%、西ドイツ10.0%、東ドイツ6.0%の報…

レプトスピラ病の疫学的特徴

1)病原レプトスピラの証明 暗視野顕微鏡による検出法、モルモットなどを用いる動物接種法、コルトフ培地などを用いる培養法がある。材料は、患者では第1病週の血液、第2病週以後の尿、剖検材料では腎。保菌動物では尿または腎を用いる。 2)血清反応 顕微…

つつが虫病

A 方針 ツツガムシの生態や棲息状況から見て、ツツガムシを絶滅することあるいは吸着を完全に防ぐことはまず不可能である。したがって、万一発病した際の早期診断、早期治療がつつが虫病による不幸を防止する第一条件であるから、医師はもとより行政担当者…

リーシュマニア症の疫学的特徴

1.発生状況 内臓リーシュマニア症は新旧両大陸の熱帯、亜熱帯地方に広く分布している。アジアではインド、中国などに見られる。皮膚リーシュマニア症のうち旧世界型はアフリカ(エチオピア、ケニア)から中近東、地中海沿岸、ロシア、インド辺りに分布して…

らい(ハンセン病)の疫学的特徴

1.発生状況 わが国で報告されているらいの現在患者数は6、729人で漸減の傾向にあり、そのほとんどは治療後の経過観察中あるいは後遺症の治療中の患者である。伝染源となり得るため治療を必要とする症例数は約800人に過ぎず、その有病率は人口10万対1以下と…

ペスト、Plague (Pest):黒死病 Black death

I 臨床的特徴 1.症状 リンパ節炎、敗血症および小出血斑を皮膚に生じ、重症例では高熱に加えて中毒症状、意識障害、ショックなどを伴う急性細菌感染症である。臨床的に2型に大別される。 1)腺ペスト 普通に見られる型であり、感染部位の領域リンパ節が…

糞線虫症 Strongyloidiasis

小腸の粘膜内に寄生世代の雌成虫が寄生する線虫感染症。 症状は感染幼虫の経皮感染時、幼虫の肺の通過時および寄生世代雌成虫の小腸粘膜内寄生時に見られる。感染幼虫の経皮感染時に見られる症状は皮膚炎によるもので、局所の発赤、丘疹などである。肛門周囲…

フレボトームス熱

I 臨床的特徴 1.症状 通常突然の高熱をもって始まり、前頭部頭痛を伴う。サシチョウバエphlebotomus pappatasiiに剌された皮膚にかゆみのある小丘疹ができ、5日ほど持続する。項部硬直があって、眼球後部の疼痛、特に眼球を圧したとき、または頭部を動か…

ブルセラ症 Brucellosis:波状熱 Undulant fever、 マルタ熱 Malta fever、 地中海熱 Mediterranean fever

全身性の慢性感染症であるが、ヒトでは急性期症状も著明である。悪寒、発熱、頭垢発汗、関節・筋肉痛、衰弱感を呈する。不顕性感染も多い。典型的な場合、発熱の経過が特徴的で波状熱を呈するので、ヒトの本症を波状熱ともいう。メリテンシス菌(マルタ熱菌…

フランペシア :熱帯非梅毒性トレポネーマ症

I 臨床的特徴 1.症状 第1期 潜伏期が過ぎた後、トレポネーマの侵入した部位(通常、顔、四肢)に紅色丘疹が発生する。これがすぐ潰瘍となり、その周辺に小形皮疹が多発する。この潰瘍は徐々に周辺皮疹を吸収しながら大きくなる。表面は盛り上がり増殖状…

ブラストミセス症(Blastomycosis)

原因菌はBlastor、砂ces dermatitidis (完全菌はAjellomyces dermatitidisと呼ばれる)である。本症は北米大陸、特にミシシッピー川渓谷沿いの地域に多発する。最近カナダ、アフリカ、イスラエル、インド、サウジアラビアなどでの発生が報告されている。土壌…

デング出血熱:チクングニア出血熱

I 臨床的特徴 1.症状 主にアジア熱帯域に流行する、血管透過性異常、体液喪失、血液凝固異常を特徴とする重症疾病。主として小児に見られ、成人はときに罹患。突然の高熱で始まり、食欲不振、嘔吐、頭痛、腹痛を伴う。止血帯試験陽性、打ち傷ができやすい…

炭疽

動物およびヒトの急性細菌性感染症で、皮膚炭疽、肺炭疽あるいは腸炭疽などの型が見られるが、放置すると急性敗血症で致死的になる。 皮膚炭疽では感染局所の発赤、浮腫で発病し、中央部に水疱を形成し、黒褐色の痂皮ができるoこれを炭疽癰carbuncleという。…

単純ヘルペス(単純疱疹)

Ⅰ 臨床的特徴 1.症状 単純ヘルペスは最も典型的な持続潜伏性ウイルス感染症の1つで、再発傾向がある。単純ヘルペスウイルスHerpes simplex virus (HSV)には1型と2型がある。 HSV1型の初感染は乳幼児期に起こり無症状に経過することが多いが、1~10%は…

大腸菌性下痢

I 臨床的特徴 1.症状と病原体 大腸菌性下痢の原因となるいわゆる腸管病原性(下痢原性)大腸菌は、その発生病理ならびに病態生理から少なくとも以下の4種類に分けられる。 1)病原(血清型):大腸菌 2)毒素原性大腸菌 3)組織侵入性大腸菌 4) Vero毒素…

鼠咬症

鼠咬症といわれるものには2つの病原体による感染症が含まれる。 1つはモニリホルムレンサ桿菌SZyゆた■)bacillus moniliformisというグラム陰性の多形性菌による感染症で、ほかの1つは、鼠咬症スピリルムSpirillum minorによる感染症で鼠毒Sodo-kUともい…

旋毛虫症

毛頭虫類に属する線虫の旋毛虫Trichinella spiralis (最近では本種は3種のsub-speciesより成り、分布域などが異なるという考えが提出されている)の成虫が小腸粘膜内に寄生し、そこで産出された幼虫が全身の筋肉に散布され、寄生することによって起こる疾患…

接合菌症

接合菌門Zygomycotaのムコール目Mucoralesに属する真菌、Mucorなどの諸菌種による真菌症。これらの真菌は糖尿病、白血病、リンパ腫、広範の熱傷、免疫抑制処置などいわゆる易感染性宿主compromised hostに感染し、血管壁内に侵入増殖して血栓や梗塞を引き起…

赤痢アメーバ症

I 臨床的特徴 1.症状 赤痢アメーバ症は人体寄生性原虫である赤痢アメーバによる消化器症状を主徴とする感染症である。病型は腸アメーバ症amebiasisと腸外アメーバ症extraintestinal amebiasis とに大別できる。前者は具体的にはアメーバ赤痢amebic dysent…